宅配便から荷物を受けとると、僕は電子タバコをくわえて気持ちを落ちつかせようとした。
届いたのは闇サイトで購入した長いロープのようなものだった。
「化学繊維のため成功率100%」と書かれていた。
中学2年の夏が過ぎてから、僕はいじけた気持ちで日々を過ごすようになってしまった。
30度を超える中、使い走りをさせらりたり、後輩からは挨拶すらしてもらえず、どんなに練習してもボールをバットに当てることすら出来ない自分にいらだちを感じて、心が折れてしまったのだと思う。
3日前には恋人から別れ話をもちかけられ、勤め先からは次回の契約を更新しないと告げられ、健康診断では肺がんの可能性を指摘された。
僕は闇サイトの指示通りにセッティングをすると、顔が引きつるのを感じた。
これでいいんだ、こうするしかなかったんだ、と言い聞かせながら、僕は自分の首をロープに巻きつけた。
意識が沈んでいくのを感じながら、ふいに自分の中で長いあいだ眠っていた感覚が蘇って来るような気がした。
情けないことばかりの人生で、こんな情けない気持ちのまま終わってたまるかという強い感情を感じた。
僕は強く力をこめてロープを首から引きはなすと、なんだか気持ちが軽くなったような気がした。
乱れた呼吸を深呼吸して整えた後、僕は決意した。
何度も失敗してきた禁煙を今度こそ成功させる。
契約期間が残るあいだは全身全霊でキーボードを叩き続ける。
そう考えて静かな気持ちになると、背筋を伸ばしながら、恋人の連絡先を目がけて指をすべらせた。
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20年越しの復活
20年越しの復活
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コメント(2)
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一度、死んだ人はもう今までの失敗をクリアしましたからね。これからは自分に今できることを全力でやるぞって決意が見える詩でした。