何をしてきたかを問われると
手のひらを見つめ心苦しくなる
したくても出来なかったことは多い
田園がひろがり
稲の葉が茂る
緑ゆたかな農村に生まれた
まだ若かった父も母も
優しい祖母も慎み深い人であったが
なぜ慎み深く生きるべきかは
教えてくれなかった
生きていくうえで
節約は当たり前のことだった
祝日のデパートで売る玩具のような
欲しい物は容易に我慢できたが
街の子どもらからの
貧しい者への目が我慢できなかった
人に優しいことは
お互いに幸せになるために重要なことだが
だれにでも優しい人は
たいてい不幸と共にいる
半世紀以上も生きた今
追憶のなかに生きるようになり
信じていた行為の意味も疑った
なしたことは恥ばかりで
意欲を失うのは重ねた事の多さから
小雨の降る庭には
白いヤマボウシが咲いている
巡る季節のように輪廻があるとしても
また記憶が無くなるのは好ましいと知る
思い起こすのは若い純粋な友
幼かった弟
美しい夜の街角
新緑の茂る森林での日々
この詩はとても共感できます。それなりに年を取った今、記憶に残るのは何かの後悔が多いです。でも、私自身、ちょっとした優しさをくれた人たちに今でも恩義を感じていることがあります。しかし、その人たちは私が恩義を感じていることは知らないでしょう。そういうことは、これまで幾多の小さな優しさを育てた人には数多くあると思います。