花瓶にいれた白い花が
慈愛のように蜜をしたたらせる日
わたしは罪とともに
杉の小枝を焼く
風に衣服は洗われ
沈黙は煙となって消えさる
ユリの花が咲く
農民は太鼓を打ち鳴らし
虫を追う
水と血にみちびかれ
わたしが死の国に行けば
死の影には神がすわる
履きなれた運動靴にも灰色の夜があり
木も草も花は咲かない暗い海へ
たいまつの炎をかかげ
髪を指でとかし
ありのままで向かう
死者を言葉の力で呼びだし
火に酔い
言葉のない者の声と
燃える太陽を待つ
わたしは追う者であり追われる者
こころのなかで空にむかってさけぶ
迫害する者から
魂が卑しめられませんように
いのちに感謝することができますように
深尾さん
私たちが主食とするごはん。その米を育てるために、ずっと昔から農家の人々が、悪天候や、害虫と苦闘されて来たことを、この "虫送り" というタイトルを調べることで、自分は少しだけ、わかったかもしれません。
詩は、"虫送り" の賑やかさや、松明の炎、夏の匂いが相まって、郷愁ととともに、死者の行く道が見えるようで、なにか寂しさを感じました。
最終連の、作者の祈りの叫び、とても胸に響きました!