最初は二つに見えたのが
本当は一つだったというような
そんな淡く仄暗い
謎の大きな生活をしている
みんなが同じものを見ているというのは幻想なのかどうか
僕がつかみたいのはこのことなのだ
僕と一緒に帰る人はいない
僕は別に一人が好きなわけではない
でもみんなは向かいのホームにいる
自分を売る術を心得ている奴ら
群れる彼らは何かを求めているわけではないのだろう
だから彼らは道を見失わない
僕は何かを求めて進んでいるはずだ
それでいつも結果はみんなと違うことになる
僕はしょっちゅう迷子になる
変化を恐れながら
磯に沿って行くしかないのが人間なのかな
終電に近い電車の車両の中で
僕は息を吹き返す
僕がいつも隠れる
あの淡く仄暗い地帯が
見えてくる
二重線が見える
地に向かっては地平線が
海に向かっては水平線が
あるがままに、なるがままに
そんな心でいれば
自然にイメージが湧き
そのイメージ通りの場所へ
毎日本当に行くのである
同じことを繰り返しているようで
しかしいつも何か新しいことに遭遇する
いつもの道の上に
いつもと違ったことが起きる
だから考える必要はない
同じことを繰り返すようでも
いつもの道を行くことだ
空と地との間で人と人とが結びつく
人と人とが結びつき続けることは難しい
空と地が遊離している力が緩む時
空が地に下って来て
もう空と地との区別がなくなってしまう時
そして海では
游弋していた艦船が
宇宙に溺れてしまう時
その時に
ああまた戦略などという忌まわしいものが
柔らかな土の上に茎を出す
あるがままに、なるがままにと
こんな小さな国には
新聞社は一社しか要らないと言う人もいる
虚空の下には家々の屋根
ばらつき落ちる鳥の群れ
ああまた言葉の臭味がする
あなたから
少しは安心できる電話が欲しい
封筒を翻した時
あなたの名前があって欲しい
自分で自分の体に手術をするのはもうやめたい
yasu naさん
詩の一行一行はわかりやすくて、一連ごとの意味もわかる…
そうして、最終連まで読んで、またあなたが組み込んだ迷路にはまってる私です。
これに似た手法の作品をビーレビで何度か読んで、あれやこれやと考えていたのを思い出しました。
最初の五連までで、今現在の作者の立ち位置を知った。
あなたと、みんなとの間に見える最初の二重線。
詩の中盤で、"終電に近い電車の車両" に乗り込んで、物思いにふける等身大の作者がいて、少し面白い。
車両の窓からは、昼間ならきっと見渡せたであろう遥かな水平線と地平線も、
仕事か何かで、夜の疲れた体が見るそれらは、もはや瞼の奥でイメージされ、あたかも作者の進みゆく道を示唆するような、心が、言葉に変換していった二重線。
>空と地との間で人と人とが結びつく
>人と人とが結びつき続けることは難しい
理想を抱いて、誰かと結びついても、同じ理想を持ち続けることは簡単ではない、ということでしょうか。
最終連の、”あなた” への想いと、最後の一文 …
う~ん、迷路からまだ抜けられない私です(苦笑)
ヤスナさん、詩を読ませていただきました❣️誠実なお人柄が感じられる素敵な作品でした。迷いと真実の間を浮遊している様な感覚を覚えた読み応えのある作品だと思いました。迷いは人には必ずついて回るもの。人として生きるとはこういう事だと思いました。良作をありがとうございました^_^🌸✨