涙は千の言葉
君と初めて旅をした
親のあわてるのをよそに
それぞれの家を出た
正月二日
新宿発二十二時十分の夜行列車
行く当ても無い ただ二人で居たかった
無人の車内は僕達だけのため
この旅の様に当てどない会話が続いた
不意に君が言った
「私よりあなたにふさわしい娘がきっと現れるわ」
僕の心は一気に奈落の底へ突き落とされた
それは聞こえの良いお断りの言葉じゃないか
上目づかいに見上げる君
「そうかもしれないね」
僕は精一杯の虚勢でそう言った
ふっと顔を伏せた君の目からポロポロと涙
千の言葉を聞くよりはっきりと君の心が分かった
僕はつまらない意地を張ったことを悔やんだ
「ばかだな 僕は君を選んだんだ」
君はおそるおそる顔を上げる
「君は違うのか」
小さく首を振る君
指で君の涙をすくい 顎を引き寄せる
しゃくり上げるくちびるに唇を重ねた
十九とはたち どちらも遅いファーストキス
震えるほど甘く 少ししょっぱかった
二人のこれまでの日々や車内での会話、親との関係といった
詩には書かれていないことが行間に詰まっているように感じました。
「ばかだな 僕は君を選んだんだ」は温かいセリフだなぁ、と胸に沁みました。
クロエさん、こんばんは。
わあああーーーー!
ガラスのような繊細な、若きふたりの、はじまりの詩ですね!
節と節、行と行の間が絶妙に配置されており、見た瞬間、美しい詩だ! と思いました。
また、ふたりが互いの気持ちを探りながら、やがて真実の愛を抱きしめ合ってゆくクライマックスに圧倒され、素敵な詩の物語りに魅せられました!! ゆめの
こんばんは。
>女性の二十歳前後って凄く精神的に不安定で何に対しても不安を感じる年頃だから
このお言葉耳に痛いです、女性の気持ちを理解していない唐変木でしたから,つまらない意地を張って今思えば何ともふがいない対応をしたものだと、返す返す自分の幼稚さに恥ずかしくなります。
>ファーストキスって、そんなに爽やかな味しないですよね。
あんな状態ですから拒否されると言う気はしなかったのですが、何せ未経験な事なのでかなり緊張はしていました、でもこれで彼女は僕のものだと言う充実感はありましたしとても幸せな気持ちでした。
素敵なコメントありがとうございます。
昭和歌謡歌詞の様な作品ですね。誉めてますからね。
今と時代背景の違いが凄く伝わって来ます。
「私よりあなたにふさわしい娘がきっと現れるわ」の言葉が凄く解る気がします。
女性の二十歳前後って凄く精神的に不安定で何に対しても不安を感じる年頃だから
「そうかもしれないね」の言葉は、発言した人が思うよりショックが大きかったと思います。
安心させての言葉に突き放すような言葉が返って来たら、私でも涙が想像しただけで胸に突き上がるものを感じました。
ファーストキスって、そんなに爽やかな味しないですよね。詩のレトロな感じが最後の節もロマンチックに感じれました。
この詩のタイトル「涙は千の言葉」は言葉では言い切れないほど君の目には愛の涙をためていたでしょう事を思う時、胸が熱くなる想いで詩を拝読させて頂きました。
今愛はお互いの心をとても優しく包んでいくことでしょう。
それにしても君の「私よりあなたにふさわしい娘がきっと現れるわ」に対し
「そうかもしれないね
僕は精一杯の虚勢でそう言った」この言葉にまったくもう…といらっとさえ覚えますが読み進むうちに作者は「指で君の涙をすくい 顎を引き寄せる」そのファーストキスに千の涙をすべて飲み込んで愛を受け入れた…さすがにこれが作者のすべての愛と感無量でした。
この素晴らしい二人の愛に心から祝福を申し上げます。
それにしても十九とはたち…ただ一図に愛せる年ごろなんですよね。
ちょっと焼いてみたりしたUUXでした。
(UUXにだってそういう人いるんだから…あれ???(^^)/)
とにかく胸熱くなる素敵な詩でした。