朝焼けが彼方に貼り付いていた
誰の耳にもささやかれない言葉の金泥と共に
上空の気流までもが山脈となって
逃げ場のない自由の壁面にたたずむ
ここにお前は入ってこられない
戸を叩くように叩かないでくれ
俺の記憶の鼓膜を
もう石灰に喰われているんだ…
空は固い血を垂らしている
彼女が柘榴を噛もうと地の底へ降りたように
空もまた地の熱を求めて降りていく
野が緑青を吹いては雪に打たれ赤金へ戻るように
空もまた秘密を打ち明けるために沈黙を私に注ぐ
愛していた
私は…空を…
だが
俺は契約をさせた
空よ、お前の半分を岩にくれてやる
もう半分は
…玩具の太陽に
そういうわけで
朝焼けは彼方に貼り付いていた
誰の耳にもささやかれる沈黙の緑泥…
…は沈殿して
湖嶽の体をなし 熱の化石を露わにした
遠近のまぼろし 膠着した暁光の下
波紋と鱗雲 鉱脈の共鳴
輪廻する視線は
自由の壁面に額を打ちつける狂人
蓋し
それは無機の光輝である
お前について黙していることは。