世の中が白くなる
男の人の髭も
女の人の靴も
ゴツゴツしたものが嫌われて
つるつるしたものが好まれる
私たちは幾つもの坂道を
乗り越えて来たはずなのに
未来へ続く道は
平坦な方を望んでいる
そんなに優しいものが良いかい?
そんなに綺麗なものが好きかい?
棘のある言葉は避けられて
それでも何かに刺さりたい
心はナイフを近付ける
誰かの発言を聞いて
気持ちの良いまま
死にたい人がいて
その人の最期は
目を閉じているのかなんて
全然興味はないけど
あぁ、いつから世界は
汚れを映す鏡を
曇らせたのだろう
溜め息や涙で
見えにくくなった明日に
何の変化も起きないまま
歳を重ねていく
本当のことって怖いから
誰も覗きたがらないし
見て見ぬふりをする
淡くて白い世界の
儚さに酔いしれながら
そのくすみを取るために
私はタオルを絞る
前略、蛍様
「誰かの発言を聞いて
気持ちの良いまま
死にたい人がいて」
これは私個人、 誰かから「褒められて」うっとりしたまま・・と解しました。
他者から褒められて育った子は、褒めてくれる人がいなくなったその時から、居場所を失ってしまうでしょう。他者の褒め言葉は、自分自身で考え判断する芽を摘み取る言葉ですから。
「 あぁ、いつから世界は
汚れを映す鏡を
曇らせたのだろう」
「汚れを映す鏡」に映っているのは、誰でもない自分自身であり、その汚れた姿に目を背けることなく見ることができるか否か・・。
私が経験したひとつの例として、「障害」を「障がい」などと表記して差別を解消しようとする自治体なども実際にあって、歯の浮くような言葉をならべた表面的なことのみクローズアップされ、問題の本質にはなんら触れようとしない事なかれ主義、波風を立てないことで世間からの風当たりを弱くする・・体面重視の福祉の現場・・そんなことがありました。
「溜め息や涙で
見えにくくなった明日に
何の変化も起きないまま
歳を重ねていく」
「何の変化も起きないまま」・・起きない、と言うより「起こさない」のです。現状維持以下、変化を拒む者は、自身が安住してきた場所を失うのが恐ろしい。保身に心血を注ぐマインドは言い換えれば「過去でしか生きられない」ことに他なりません。
「臭いものには蓋をしろ」・・人間の弱さは仕方がないのか? それとも、その弱さを打破して生きるのか?
自らのタブーをも「漂白」できますか?と問いかける 一篇の詩。
ミナトさん、こんにちは(^^)
複雑な気持ちになる詩でした。
人と関わる中で温かさを感じることも傷つくこともあるけれど、そのどちらも嫌になって孤独になっていく、そんなイメージが湧いてきました。
嫌なことは見たくない、聞きたくない、でも何かに刺されたい。
そういう人間(現代日本人?)の葛藤を鋭く描いていると思いました。
excellent.
ミナト螢様 はじめまして
詩拝読させて頂きまいた。
「私たちは幾つもの坂道を
乗り越えて来たはずなのに
未来へ続く道は
平坦な方を望んでいる」
何方かというと平坦な道の方が…
でも色々を乗り越えてきているから今がある…
「儚さに酔いしれながら
そのくすみを取るために
私はタオルを絞る」
作者はだから私は頑張る…
そんな思いを感じられました。
私達これからも頑張っていきていかなくては…
そんな教訓にもきこえ、励まされた詩でした。