今夜は難解な映画を観たいものだ
それはたぶん
青春の日々に感じていた優越感を
また一度感じたいから
ただでさえ物事を貶しがちで
物事を難しく考えがちな若者たち
中でも僕の気難しさは甚だしくて
ほとんど病気と言えるほどで
何かこれと言って学習している意識はなく
それでいて己の洞察は鋭く深いと思い込み
いつか大成すると信じていた
群れを成す若者たちのいる街の上を跨ぐ
名を忘れた橋を渡って行ったミニシアター
あの頃観たレイトショーみたいな難しいのを
今夜も観たいと思っているわけだ
ああ落ちるところまで落ちたよ
何の芸もなかったわけでもないのに
なぜか濁流に流されて
遠い彼方の闇に行き着いた善良な奴らを
僕は幾人かは知っているし
僕だって奴らと同類なんだと共感するね
今にして思う
奴らの時代は来なかったのだ
奴らの親の世代は太陽ではなかった
奴らを明るく照らすことができなかった
坊主頭では接客業務はできないのと同じで
笑顔なしでは何事もつとまらない
現代詩人だって
写真を撮られる時くらいは微笑むものだろ
何が快いのか分からないけどね
晴れた昼に街を行けば
さまざまな世代の人間を陽が平等に照らす
あなたの世代の地層も見える
他の層よりひときわ暗く静かな断面
今なお内向的で思い悩んでいる
あなたにこそ
ミニシアターのレイトショーは相応しい
スクリーンの光があなたの顔を控え目に
行き届いた思慮をこめて照らす
文学部なのに耳が悪くて
外国語の勉強を諦めざるを得なかった僕
日本語だけで生きて行こうと覚悟した
そんなことざらにある話だけど
ショッキングなことではあるよね
それでも得体の知れぬ自信は揺るがなかった
ああ落ちるところまで落ちたよ
僕らの時代は来なかったらしい
せめて青春の日々に観た
いくつかの難解な映画をここにまた観て
それが放つ仄かな光を浴びて
優越感
優越感を感じたいのさ
yasuna.さん、こんばんは。
なんと赤裸々な自叙伝だろうか! yasu.naさんの最近の作品を読むたびに、ああ、yasu.naさんはこんなに感情が豊かな人だったんだと、それが意外でもあったし、本当に驚いています。 簡単に感想を書けそうにないとも思えたし、でも読んでいて技巧じゃない、何より面白い! 音楽が好きで、ギターはベースやってて、好きな子に甘い歌声を聞かせ、事典で言葉を深いとこまで調べたり、何人かカノジョを捨てたり、短歌に集中してたり、と.... 詩にするのにあり余るほどのテーマの引き出しを持ってる人。
あなたの詩からは、人間臭さとともに、情熱、若さが、痛いほど伝わって来る! 優越感が欲しいのは、心が若いから! 心から情熱が消えてないから! 今後、yasu.naさんの中から生まれる、どんな作品も楽しみにしてます! YUMENO