ツツジ色の傘の下、小舟が一つ
枝で作られた船着き場にて
私という巨人を見上げている
お前は誰に造られた?
小さな冒険者の手によって。
ほう、それでどこに行く?
自由なる大海へ。
私はその強き意思に感心する
「この川の果ては溜め池に繋がり、淀んだ水は海に流れ出ることはない」などとは言わないことにした
指でつんっとつつけば冒険が再開される
勇敢なる井の中の蛙を気まぐれに追う
鼻歌混じりに小舟を追う、追う
笹舟ナナシ号
進めや進め
薄い船底滑らせて
雨の砲台すり抜けよ!
(ゴーゴーレッツゴー)
笹舟ナナシ号
歌えや歌え
おっと目の前石一つ
決して止まるなすり抜けよ!
(ゴーゴーヨーソロー)
傘をさすのも忘れて私は笑う
見捨てられた小舟はもはや私のもの
彼の冒険は私の冒険なのだ!
しかしそこに難所現る
溜め池前の大滝に、彼は消えてしまった
あぁ、笹舟ナナシ号
お前の運命や如何に……?
濡れそぼつ木々の下、小舟が一つ
くしゃくしゃになって回りつつ
私という巨人を見上げている
聞いているか、ナナシ号よ。
お前と私の望んだ大海ではないが、
花咲き浮かぶこの池もまた、
悪くない終点ではないか?
笹舟ナナシ号
沈むよ沈む
泥中にて生まれ変わり
いつか花となって再会しよう
(おつかれララバイ、またいつか)
からすばさん こんにちわ^^
コメントといいね! 有難うございます。
笹船ナナシ号を読ませて貰いました。
笹船を見下ろすアングルと笹船から見上げるアングルが
情景のリアル感を感じる事が出来ました。
つつじ色の傘で防げる雨も笹船の上では防げない
雨の使い方も好きかも^^
指で突かれ旅出した先が大海でなく池なんですね
人生が華々しい場所ばかりが輝く舞台とは限らない
最後に花が咲く予感と確信が感じられるところが良いですね!
笹船 ナナシ号と言ってる時点でナナシでなくなってる~
自分が作った笹船で無いけれど愛着を感じれるところも好きです。
みくろうさん
瞳を輝かせ、心躍らせながら、作り上げた小さな笹舟を大海へ船出させるべく、船頭さながらの少年と "笹舟ナナシ号" が、繰り出した大冒険! わくわくさせられたし、とても懐かしい気持ちになりました!
紙芝居の語りの如く、あるいは落語の如く、気品に満ちた語りや、かけ合いのリズムが、素晴らしかったです!!
烏羽美空朗さん
3月の春へのいいね!有難うです^^
同じ春を感じて頂いたなら幸いです。