展示されたコーヒーカップは静かに時を過ごしている
ガラスケースの中でコトリと音も立てずに毎日陳列されている
蔦の張った壁に覆われている洋館は美術館になっていて
昼間の屋外では暇を持て余した子供達が戯れている
訪れる観覧者達はコーヒーカップを見ながら価値が有るとか無いとか蘊蓄を垂れている
鎧や剣も飾られている展示室は時が止まったようにそのずっしりとした重厚感でその場の温度を冷たいものにし
宮廷の衣服の煌びやかなシルクの裾も過去の栄誉を見せつけている
「おいで」
「おいでもっと側に」
衣服の袖が観覧者達を誘う
社交会は真夜中に行われる
着飾った淑女は伯爵の手を取る
誰も居ない美術館で開催される亡き者達の宴
コーヒーカップはそれを見て笑う
人の世のなんと儚いものかと
踊れ
踊り続けよ
そして
側においで
喫茶店の話かと思ったら、美術館なんですね。なぜかワッフルが食べたくなりました。
なんでだろう?