ちく、たく、ちく、たく
下手な寝相と時計の音。
ちく、たく、ちく、たく
私は今生きているの?
長針と、短針が、重なった。
部屋に、小さな鐘の音、響く。
ちく、たく、ちく、たく
差し込む斜陽と誰かの声
ちく、たく、ちく、たく
どうやらまだ生きているみたいだ
秒針と、分針が、すれ違う。
死んだ、魚のような目を開く。
目の前を通り過ぎる
沢山の影。
私、貴方と、話がしたいの。
立ちあがろうにも
背骨がない。
行かないで、ここにいて。
ちく、たく、ちく、たく
ふと鼻歌を口遊んだ。
ちく、たく、ちく、たく
私は今日も部屋に一人。
長針と、短針が、そっぽむく。
部屋が、微かな茜色、染まる。
とん、とん、とん、とん
ノックの音に顔をあげた。
とん、とん、とん、とん
「綺麗な歌声を聞きにきた。」
秒針と、短針が、立ち止まる。
部屋に、大きな心臓の音、響く。
扉の向こう側に
誰かの影。
私、貴方と、話がしたいの。
扉を開こうにも
背骨がない。
行かないで。そこにいて。
喉を絞りあげて叫んだ声は
微かに上擦っていて
貴方は優しく笑った。
孤独な部屋に
一つ影が落ちた
私、貴方のことが知りたいの。
抱きしめようにも
背骨がない。
「大丈夫、ここにいるよ。」
「貴方に会いにきたんです。」
「どうして?」
「貴方の歌声がとても綺麗で」
「……寂しそうだったから。」
「……」
「何か、したいことはありませんか?」
「私、貴方と話がしたいわ。」
「えぇ、よろこんで。」
くだりさんへ
スペース聞きました! くだりさん、優しい声だし、自然な喋り方だし、ラジオのパーソナリティみたいですね !
おまけに歌声も聴けてラッキーな気分 笑顔
囁くように聞こえる時計の針の音と、斜陽の移ろいが、背骨のない主人公 "私" の、孤独な、でもぬくもりに出会えた、今日という一日を進行してくれたように思いました。
私も、生きる意味、生きてる意味ってあるのかと、自分に背骨が無いように思えた時が、何度もありましたが、 負けず嫌いな性格だったのと、詩が好きだったことで、こうしてここに、今も立っていられる自分です。
それにしても、詩の最終章の二人の会話は、私のお気に入りです!
偶然であれ、必然であれ、ちゃんと出会えて、気付いて、見つけて、声をかけてくれた "貴方" が、今、"私" の側にいるんだと思うと、ああ、よかったなって、心から嬉しく思えました!
ゆめの