虚無を見つめる私の前に
あなたは静かに現れた
透き通るような白い肌
カラスの羽のように艷やかな黒い髪
血のような人を惑わす赤い瞳
黒い蝙蝠の羽と尻尾を持った
美しくも妖しい少年
あなたは耳元で甘く囁く
今の苦しみから逃れたい?
僕が手を貸してあげようか?
君の一部を差し出してくれたなら
僕は対価に願いを叶えてあげる?
誰も助けてくれないんでしょ?
だったら僕に願いなよ?契約しよう?
私は彼の言葉に頷いた
彼は満足そうにニンマリ笑った
その契約で瞬間は助かりながら
長期的な代償で私は苦しむ
彼の本当の目的を私は知らない
契約を破棄する方法は唯一つ
現実から目を背けず受け入れて
契約した力を使わないこと
私は彼との契約破棄のために動いた
周りの力を借りて乗り越えた
当時はそれに頼らなければ
生き残れなかった
私はそれを理解している
だが爪痕は確かに残った
後悔と罪と痛みと
パンドラの底に残された微かな希望が
すぅさん
切なくて、悲しくて、とても深い話ですね ... あなたの青春、人生の、ある一ときの、危うい闇魔を乗り切ったこと、今それを省みることができていることに、私は心から安堵します! 本当によかった!! もしできるなら私は、
「パンドラの底に残された微かな希望」のひとかけらでもいいからなりたい!
すぅさん 依存症を読ませて貰いました。
異様なビジュアルの少年との会話、自分の一部を差し出す行為
普通の精神状態では無い事が伝わって来ました。
この契約が対等でない事が少年の笑い方で伝わってきました。
長期の契約を交わす中で、契約破棄の方法を見失っていない
主人公の心の強さと契約破棄へと進む勇気が胸を熱くさせました。
パンドラの底に残された微かな希望を奪う事が
彼の本当の目的かもしれませんね。
爪痕を胸に彼に負けずに進んで欲しい気持ちで一杯になりました。
依存症は目には見えない病気で、だからこそ当事者でなければ理解するのが難しいと個人的に思います。
周りには当事者がどんな思いを胸に抱えて生きているとか、なぜ依存するのか本人が語らなければ恐らくわからないでしょう。
だけど本人も周りに説明する気力すらないことだってあるでしょう。
だから、今回は目に見える形で依存症をファンタジーな詩として表現してみました。
あくまでも、私が体験した感覚を見える形、聞こえる形で表現した場合の例え話なので一例として読んでもらえたら幸いです。
見えない物や感じた事のない感覚を共有するのも詩作活動だと
自分は思っています。
それが恐怖や辛い事で有っても、共有する事で理解が深まり広がれば
恐怖が薄まり、辛い思いを理解して貰える事が可能だと思っています。
今回のすぅさんの作品で依存症の辛さを目を背けることなく共感出来た人は、
少なくないと思います。
これからも一緒に詩作活動を頑張りましょう。