キラキラ型の星
空を見上げると
星の形が、先のとがった金平糖のようなキラキラ型に見える
ほほほー、きれいだな
ルイは眼鏡もコンタクトも使っていない。
でも、視力はよくない。
どのくらいよくないかというと、ものもらいで目がむずくて辛いから眼科に行ったのに、お医者が眼鏡をかけた方が、うんとよいと説得し始めるほど。
いろいろ言っていたが、内容はほぼ覚えていない。なかなか眼鏡の処方箋が欲しいと言わないから、お医者も焦りだしたのか
「眼鏡をすれば、よく見えます。この世界には美しいものがたくさんある。それを見落とさずに見ることができますよ」
なんてことを言っていた。
でも、ルイにとっては「このお医者夢見がちさんか?!」程度の話だった。
結局、お医者の長話もむなしく、ものもらいの処方箋のみを受け取って薬局へ急いだ。
あれから随分たった今も、裸眼で暮らしている。
確かに不便もある。
人の多い場所で待ち合わせれば友人の判別はつかないし、慣れない店に入ると売場案内の文字が判明しずらくて買い物に手間取ることもある。
映画館に行けば、字幕を追うのに必死になり、スクリーンの上部 特に左右の隅っこは見落としがちだ。後から家で観て、シーン全体を把握することが多々ある。
でも、ぼんやりした世界はよい。
普段は眼鏡を使っていないが、実は度の入った眼鏡は持っている。
その眼鏡をかけて驚くのは、観えることより、視界に広がる輪郭の鬱陶しさだ。きっと、レンズの範囲でだけ発生する輪郭だから印象が強いのだろう。
それにしても、きっちきっちし過ぎだと感じてわずらわしい。
輪郭のぼやけた世界はなんとなくあいまいで、ゆったりしている。
色や明るさなどの組み合わせによっては遠近感もあいまいになる。これは危険な場合があるから、いつかの眼科で熱心に眼鏡の使用をすすめられたのだろう。
だが何より、星だ。眼鏡がいらない一番大きな理由は星。
子どもの頃は目がよかったので、夜空を見上げると丸い星が見えた。
丸い
それがショックだった。
星は星型ではなく、丸い!
子どもの頃のルイの気持ちでは、夜空に輝く星は星型であってほしかった。キラキラを形から体現していてほしかった。星座物語の挿絵のようにキラキラキラッと見えてほしかった。
この気持ちを引きずっていたのか、長いこと夜空に関心を向けずに過ごした。
なのに、どうだ。
目が悪くなってから、なにかの拍子に夜空を見上げた。
キラキラキラーン
数少ない星々が輝く形をしていた。
キラキラの立体!
金平糖だ!金平糖の先っちょが尖ったような、子どもの頃に思い描いた以上のキラキラ型が空にある。
「ああ、目がわるくなるって不利ばかりじゃない。理想の星が輝いてる。
凄いキラキラだー」
ルイは理想の星空を見れるようになった。それは何よりも誰よりも夢見がちな感情なのかもしれない。
でも、ふいに現実のものになった理想の星空。しかも自分にしか見れない星に対する嬉しさは、ひとしお。
いつの間にかルイの目は、日常に必要なものを大概教えてくれて、子供の頃の願望を叶えてくれる、すごい目になっていた。
今日もルイはこの目で、過ごしている。
わじまさん、はじめまして!
ルイくん、素敵ですね。
自分は眼鏡かけてるので、裸眼で星や月を観れたらなぁと、たまに思うのですが、ルイくんは逆の考えで自分の発見に素直なところが良いなと。
それと、眼鏡の輪郭の鬱陶しさは共感しました(笑)。