ある寒い朝の事(短編)
それは風花の舞う寒い朝だった。
差し込む光からもう日が高いのが分かる、いくら休日とて腹は減るからいやいやながら起きる事にした。
机の上の昨夜飲み残したサイダーがきまり悪そうにプクンと一つ泡を吹いた、私はちょうど喉が渇いていたので、その冷え冷えとした昨日を飲み干した、何とも間の抜けた味がした。
窓際が突如にぎやかになった、観光バスを降りたすずめたちが一斉に窓の外のレストランに集まって遅い朝食を始めたようだ、食事とお喋りで姦しい。
私はしばらく曇りガラスの内側から彼らの姿を見ていた、すると私の魂がむずむずし始め、ついには居ても立っても居られなくなり、まとわりつく体を脱ぎ捨ててすずめになり彼らと一緒に冬の空へ飛び出していった、残された体は所在無くストーブの前に座り込むとのろのろと着替えを始めた。
やがて雀たちは食事も終わり、土産を手にそれぞれの帰路に就いたようで雀のレストランはまた静けさを取り戻した
凍える風をものともせず飛び回った魂は、ちっとも寒くはないらしくやっと温まり始めた体に遠慮なく飛び込んで来た、体は大きく身震いをして魂を包み込んだ。
体が元気になったのは妻の「ご飯出来たわよ」と言う呼び声が聞こえたからであった。
まだ先ほどの興奮から覚めやらぬ魂は、そうだ、今日軒先にすずめの宿を作ろうなどと、また体の嫌がる事をわくわくしながら考えていた。
クロエさん独特の雰囲気を持ちながら、日常の朝を物語にしている所が流石だなと読み終わって思いました。
飲み残しているのがサイダーって所が私の発想に無い所だし、「きまり悪そうにプクンと一つ泡を吹いた」の表現が気の抜けたサイダーを如実に表していると思いました。まあ、私なら気の抜けた温いビールかな。それを朝、見たら勿体ない事をしたと後悔しながら飲みますけどね。
観光バスから降りたのフレーズから、クロエさんが雀たちを可愛く思っている事が凄く伝わって来ました。鳥の囀りで目を覚ますのも良いかなと思いました。
最後の文節で日常生活の一部なんだと感じれて、ホッコリしてクロエさんらしい物語だなと安心感の中で読み終われました。
幽体離脱の感じ、幽体と実体が私と真逆なんだと思った所も面白く思いました。