(鍵)
(見覚えの無い鍵)
季節も秋らしく成って来たので、秋晴れの下で本でも読もうかと公園へと出掛けた。手提げカバンには小さめの水筒と短編が幾つか書かれている単行本入れた。子供達の声よりもママ友達の声の方が聞こえて来そうな公園の隅に有るベンチに座り本の続きを読み始める。読みながら今までの筋書きを思い出し本の世界へと入り込んでいった。
一つの話しを読み終わった所で持参した水筒の麦茶を口へと運んだ。ママ友達も頭を下げ合いながら子供を呼んで、思い思いの方向へと帰ってゆきだしていた。思っているより時間が過ぎていたのかと思い本と水筒を手提げカバンへと入れようとした時に鍵が目に入った。見覚えの無い鍵だった。取り上げると小さなメモが付いていた。メモには「ゆきかげさん ひろって ください」と書かれていた。不気味さに背筋がゾワゾワとした。自分の名前が書いてあるからと言って素直に拾って帰ると思っているのかしら?かと、言って自分の名前が書いた鍵を置いて帰るのも気持ちが落ち着かないので、近くの交番へ届ける事にした。交番で事情を話し、鍵を見せると「貴女の名前が書いた鍵を拾得物として届けたいとおっしゃるのですか?」確認されると変な話しをしている気がするが「雪影という名の人に拾って欲しいと書いて有りますが、貰って下さいとは書いて無いです。」おまわりさんは、私の言葉に困った顔をしている。「私は雪影と言う名前ですが、メモに書かれている雪影とは限らないでしょ。」と言葉に感情の高ぶりを帯びてきたのを感じて、おまわりさんは「解りました、取得物としてお預かりしますので届用紙に記入をお願いします。」「半年が過ぎて持ち主が現れない時は所有権が、此処におられる雪影さんへと移りますので引き取りに来てください。」と言われ交番を出た。
一週間程度は気持ち悪さも相まって記憶に有ったが、半年も記憶に留めて置く事は無理だった。鍵の事などスッカリと忘れて、季節は少し肌寒さを感じるけれど春めいていた。天気も良いので公園で本でも読もうかと手提げカバンに水筒と単行本を入れて出掛けた。ママ友の服装は季節に先駆けて華やいでいた。本の文字を追いかける内に春眠に追い付かれ物語を夢で追いかけていた。手から本が滑り落ちる感覚で目が覚める。薄っすらとぼやけた頭で本を拾い、今日は帰ろうかと水筒と本を手提げカバンへと入れようとした時、小さなメモが視界に入った。メモには「ちゃんと こうばん へ かぎを ひきとりに いってね」と書かれていた。遠くの記憶が凄い速さで蘇って来た。
こんにちは、こんな時間だけどさぼりじゃないですよ、仕事が早く切りが付いたので。
摩訶不思議な物語の始まりですね、最初から「え!」と思わせるストーリー、私も不思議な話は好きで書きますが、だいたいドッペルゲンガーが多いです、雪影さんはちょっとホラーっぽいものが多いようですね。
さあ、交番にカギを取りに行ってくださいね、話のカギでもあるんですから(笑)。