麻婆豆腐(物語編)
目覚ましが鳴らない予定を入れていない休日は、体も頭もスローモーションで心地いいかもね。スマホの音源をスピーカーで流しながら朝食と昼食を同時に食べながら頭を使わない写真が多めの雑誌をめくりながら休日を心に沁み込ませる。やりたくない事はやらない、何がやりたいかも考えない!純粋な休日~私の為の休日~自分自身にも邪魔させない!
楽な服にノーメイクで行き先も考えずに家を出てみる。曇り空も雨傘を兼ねた日傘が居れば問題なし~家の窓から見えている高台へ向かってみようかと心は弾んでいるけれど、お洒落なお店に手招きされて新作プレートを高々と上げているケーキとアイス・コーヒーを待ちながら、結局は窓から眺める高台は少し霞んで寂しそう。
立ち寄った本屋で目に付いたグルメ本が麻婆豆腐の特集をやっていた。麻婆豆腐いいかも、麻婆豆腐を食べたいかも!雑誌に載っているお店を追う私をウインドウに映る私が「ノーメイクな顔と服装だよ」とシャツの裾を引っ張っているのが目に入る。ウフフ・・・心の中で薄笑いしながら地下の食料品売り場へと足を向ける。
台所に立ち推しのグループ曲を流しながら作るのはきまっているでしょ!
麻婆豆腐
麻婆豆腐を作ってみた
本格とか四川とか広東とか関係なく
麻婆豆腐を作ってみた
自分が食べたい自分が美味しい
麻婆豆腐を作ってみた
レシピは食べたい時の気持ち
麻婆豆腐を作ってみた
今、食べきれる一皿分の絶品を
やりたくない事はやらない、何がやりたいかも考えない!純粋な休日~私の為の休日~自分自身にも邪魔させない!絶品の休日を食べきっても休日は終わらない私の休日を舐めるなよ!さあ、こんな物語を読んでいないで自分の休日を楽しみましょうよ!嘘・嘘です。読んでくれて有難う。出来れば感想も書いて貰えると嬉しいです。宜しくお願いします。
(終わり)
ささやかな日常の事・・
山田洋次さんが「男はつらいよ」の脚本を書く時のことを次のように書いています。
「ほとんどの場合、自分の生活のなかにモチーフを見つけています。・・(中略)・・たとえば、私の子どもが小学校二年生のとき、「きょうレントゲンをうつしてきた」という。
「どうだった」って聞くと、「ハイ、うつしますっていうからニコッて笑ってやった。そしたら先生がレントゲンのときは笑わなくていいよっていった」。
こんな話を聞いて笑いながら、これは寅さんに使えるな、と思うわけです・・(中略)・・いわば、私自身の生活感覚なんです」
(山田洋次『映画をつくる』より)
倦むような毎日の生活にヒーローやヒロインは出てこない。
ただ、いつもの自分がいる。
それが詩や物語に他ならないのだから。
そんなふうに思いました。