虚実の境界 二人の過去と事情
※注意書き※
本作は実際の人物団体とは一切関係ありません。同時に内容が重い、ホラー要素、学校に関する病む要素が含まれているので、大変恐縮ではございますが予めご了承いただいたうえで読まれることを個人的におすすめします。
心の準備は整いましたでしょうか?
苦手な方は読まずに戻ってください。
大丈夫ですね?……承知しました。
それでは【虚実の境界】
〜二人の過去と事情〜
始まりです。
「屋上に来たの初めて。」
扉が開いたことに驚きながら
私はポツリと呟く。
「俺もこの学校のは初めてだな。」
斎藤さんは聞いていたのかサラッと答える。
「天気もいいし風も気持ちいいかも。」
風に吹かれるのは気持ちいいかな?と
自分に問いかけてから話す。
「あぁ、そうだな。かもってなんだよ?」
語尾に違和感を感じたらしい彼が
不思議そうに聞いてきた。
「斎藤さん、私ね自分の記憶と感覚と感情に自信がなくて、かもになる時があるの。頭にモヤがかかっているみたいだから。」
私は意を決して事情を話して、自信がない理由を話す。
「そうか、だから夢野さんは青ざめた理由聞いた時に自信がなさそうだったり、教室出ようって話した時に手を引かないと動けなかったのか。自分の感覚と感情を信じることが出来たら逃げるか立ち向かうか出来るもんな。」
彼は腑に落ちたみたいで、頷きながら
私の言動や行動の不自然さの理由を
理解してくれたようだった。
「そうだね。感じる違和感が正しいかどうか確かめる方法も今までなかったし、もし勘違いなら相手に申し訳ないなって。」
今まで一人で胸に抱えていた
心情を吐露していた。
「夢野さん、そういう時はクラスメイトなんだから聞いても良いと思うぜ。勘違いなら謝ればいいし、そうでないなら逃げるって判断できるだろう?」
彼は困ったように頭を掻きながら、
私の方を向いて諭すように問いかける。
「確かに……あれ?私なんで相手がいることを自分の頭だけで解決しようとしていたんだろ?」
私は彼に言われて自分の言動と行動の不合理さに気づいて首をかしげる。
「さぁな。分からねぇままにしてると、それが実際以上に怖くなるもんだからな。違和感覚えた時点で聞くって決めたほうがいいぜ。あんたの場合多分考えすぎてるから。」
彼は俺に聞かれても分からねぇと、手をひらひらさせながら、私の行動の不自然さと恐怖が悪化した可能性について指摘する。
「確かにそうかもしれない。聞かないと嫌な考えがどんどん広がりやすいかも。行動するのが凄く怖い」
回らない頭で振り返ると確かにそうだと思った。聞かなかった結果恐怖が増したことと、それでも動くのが怖いことに気付く。
「少なくとも今は俺がいるし、アンタのことフォローしてやれるから、行動すればいいよ。少しずつ慣れていけばいいさ。」
彼は怯える私に向かって、行動するのに少しずつ慣れていけば良いと言ってくれた。
「あ、ありがとう。斎藤さんはなんでそこまで私に良くしてくれるの?」
いくら協力関係を結んだとは言え、ここまでしてくれる彼に対して疑問を口にした。
「あぁ、それな。俺には幼馴染がいたんだけどさ、ある時から様子が言動とか行動が少しずつおかしくなったんだ。声をかけた時に明らかに大丈夫じゃない大丈夫が帰ってきて、あいつの意図を汲んで深く聞かずにいたら彼の世に行っちまったんだ。」
彼は遠い目をしながら、苛立ちと悲しみが混じったような複雑な感情と事情を語る。
「……そんな。そんなことがあったんだね。だから私に手を貸してくれたの?」
想像以上に重い理由に一瞬絶句したそのあと、彼の言葉を受け入れ再び聞いた。
「あぁ……仲良かった幼馴染に手を貸してやれなかったからか、夢野さんみたいな人見かけると助けずにはいられないんだ。もう、後悔するのは二度とごめんだからな。」
彼はここではない場所を瞳に映しながら、
私に手を貸した事情と感情を語る。
「そうだったんだ。……斎藤さん、かなり言い辛い話だろうに私を信じて教えてくれてありがとう。あのね難しいかもしれないけど、自分のことを責めすぎないでね。多分みんなが選択を少しずつ間違えてしまった結果だったんだと思う。」
私は彼が自分を信じて答えてくれたことに感謝しながら、私なりの考えを告げる。
「……あぁ、そうなんだろうな。理解していても割り切るのは難しいぜ全く。あんたも同じなんだろ?頭では分かっていても難しい。自分を許せない。俺等はある意味で似たもの同士なのかもな。」
彼は私の言葉を聞いて腕組みして視線を下げたあと頭を掻きながら吐き捨てるように言った。
「……そうかもしれないね。だからこそ、お互いの為に協力し合えるのかも。」
自分を許せない……?似たもの同士……。
確かにそうかもしれないと思い答えた。
「あぁ。夢野さんに伝えたいことがあるんだが、自分のこと大切にして違和感が本物で精神と肉体が辛い時は逃げて良いんだぜ?」
彼は再び私を真っ直ぐ見た後、私に辛い時は逃げてもいいのだと真剣に語る。
「えっ?それすると周りに色々と迷惑がかかってしまうし、そんな私は良いよ。」
私はそれを聞いて自分には自分を大切にする価値はないからやんわり遠慮した。
「はぁ……人の心配は良いから、あんたは自分の感情や感覚を身体を大切にすることを許せ。そして、それが俺や周りを救うと理解してくれ。」
彼は参ったように息を吐いて頭をかくと
自分を大切にすることが周りを救うと話す
「斎藤さん、それどういう意味?」
私は彼の言葉の意味が分からず、そのまま彼に聞いた。
「そのままの意味だ。俺の幼馴染は自分のことを大切にできなかった。結局彼の世に行ってしまって、俺含め周りを悲しませることになったんだ。そんな結末、利他主義のあいつが一番望まなかったはずだ。夢野さんはだから自分を大切にしろ。周りを思うなら尚更だ」
彼は幼馴染の話を語り、自分を大切にすることが周りの心を救うと語る。大切にできないと悲しませてしまうのは困るし本意じゃない。
「自分を大切にすることが、周りを助けることに繋がるの?」
私は彼の話を聞きながら確認の為に聞いた。
「そういうことだ。他者を大切にするのは大切だが、あんたの場合は偏りすぎてるし自分を大切にした方がいい。」
彼は他者を大切にする重要性を認めながらも、私のバランスが偏り過ぎだと忠告する。
「そうだったんだ。知らなかったな……周りは私が傷つくと嬉しそうに笑う人ばかりだったし、その人達は私が悪いって言うから。私は大切にする価値がない人間と思い込んでいたかも。家族も周りに迷惑かけるな周りに優しくするようにとばかりいうし。私の責任なんだと何も言えなかったから。教えてくれてありがとう。」
私はモヤのかかった頭から記憶を引き出して過去の記憶を静かに語り、彼に礼を言う。
「なるほどな……そういうことかよ。クソッ、胸糞悪いぜ。いいか夢野さん。そいつら全員の感覚に何らかの見えない事情で問題があるだけだから無視をしろ。聞いたら駄目だ。」
彼は私の言葉を聞いて怒りと悲しみを顕にした。そして私に向かって聞かないようにと有無を言わせない瞳を向けた。
「……分かった。私もっと自分の感情とか感覚大事にするって約束するよ。それで斎藤さんと周りを助ける。」
彼に向かって頷くと約束した。自分を大切にすることが彼と他者を助けることに繋がるなら断る理由はないから。
「あぁ、そうしてくれ。そのほうが助かるからな。」
彼は安心したように息を吐くと
こちらを向いて静かに伝える。
「色々ありがとうね斎藤さん。」
私は自分の事情に巻き込んでしまったことに申し訳なく思いながらお礼を伝える。
「前にも言った通り俺は俺の事情で夢野さんの事情に首突っ込んでるし、お互い様だから気にすんな。にしても、クラスメイトだけじゃなくてあんたの違和感が本当なら解決しなきゃならねぇ問題山積みだし、お互い頑張ろうぜ。」
彼は頭を掻きながら頑張ろうと声をかけてくる。
「そうだね一緒に乗り越えられるように頑張ろう。取り敢えず違和感を解明できたら良いなって思うよ。ねぇ、クラスに一度戻らない?クラスメイトに確認したいから。」
彼に指摘されたことを実践することで、
私も力になれるならと私はクラスメイトと
向き合うことを決心した。
「おっ、良いね。顔色も悪くなさそうだしまずはそこから片付けますか?」
彼は私からやる気があるのを見て
嬉しそうに笑っていた。
私達は授業の終わる時間を見計らって
教室まで戻ることになった。
続く
会話の語尾の違和感に気が付く斎藤さんが素敵かな、語尾の違和感を聞き逃さない程に話しを聞いてくれてる感じが伝わって嬉しいもの。
斎藤さんや夢野さんの過去の出来事が明らかに成ってゆき二人が出会って共に行動するのが運命的だと感じれる所が良かったです。二人の悲し過去を二人なら乗り越えて行けそうに感じながら物語が進んで行くのが好きです。
でもやっぱり斎藤さん言葉や態度から伝わる少し乱暴な所と優しい所が素敵です。私も斎藤さんにフォローして貰いたい。
斎藤さんアドバイスで夢野さんが自分自身を大切にしようと思い、そして前向きな気持ちでクラスメイト達と向き合おうとする心境の変化とクラスメイトとの展開にワクワクが止まりません。この先の展開を楽しみにしています。