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物語

公開·12 メンバー

雪影
Crystal of Comments
天空の雪Heavenly Snow

四角い月(5)


(月の姿を求めて)

現状を飲み込めない私を見て、男は普通に日本語で話しかけて来た。

月からのメッセージを言語化したもの、自分達以外の人には口笛を吹いている様に聞こえているけどね。

「あ・な・た・は、宇宙人なの?」自分が言っている事が理解出来ていない。何を言っているのよ、科学的な根拠が有るはずよ、そこを突くような質問をしなければ!ここ数日で自己防衛思考力が強化されていると実感する。強く成れ私、強く有れ私、取り留めも無い思考の迷路を彷徨っている私に、男は答えた「宇宙人じゃないですよ、月の影響を強く受けていますが地球人です。」もう、そろそろ本題に入っても良いかなという感じを醸し出しながら、男は私に向かって微笑む様に言った。

自分で考えても回答が出ないと悟り、男の話しを聞こうと軽く頷いて掌を前に差し出した。

「それじゃ~月影さん…」

「雪影(ゆきかげ)です。私の名は、雪影です。」微妙に名前を間違えられて咄嗟に訂正してしまった。

「御免なさい、雪影さんですか、それで下の名前は?」

「下の名前を教える程、アナタを信用してないし、苗字も教える積りで言ったわけじゃないです。」

「それより自分の名前を言わずに他人の名前を聞くなんて失礼じゃないですか?!」

これは失礼しましたと男が名刺を出した。

名刺には、ホーム・トラブルコンサルタント(怪異課)月城憲治(つきしろけんじ)と書かれていた。

ホーム・トラブルコンサルタント聞いた事の無い業種だし何この怪異課って、そもそも名刺なんて個人でも作れるし職業どころか名前すら怪しいものだわ。でも奇妙な言語や私にしか見えないチラシまだ何も謎が解けていない今では、月城たる人物を信じて付き合うしかない。

私が独り言の様に口の中で言葉と考えをこね回していると月城が聞こえて無いかの様に話し始めた。

「雪影さん、私達が何者かと説明する前に月の事を話した方が理解し易いと思うので月に付いての話しからしますね。」

男は、名刺を見ながら俯いている私に話し始めた。

「丸く見えている月が四角い可能性を考えた事って無いですか?例えばサイコロの様なキューブ状をしているとか!」

反論しようとする私に手を前に出して言わなくても解る感を出して、話しを続けた。

「サイコロ状の月のどれか一つの角(かど)を下にして、その角の対角線上にある角を上にして、その二つの角を結ぶ線を中心にコマの様に高速回転させると、月が四角いやキューブでも視覚的には球体に見える。」

我慢できずに反論を口にしていた。

「自転しているのは地球で、恒星の月が回っているの回っている意味が違うなんて事ぐらい小学生でも知って居る事実です!」

「それに高速回転しているなら、月面のクレーターを認識する事が出来ないじゃないですか。」

「うん~良いね~乗って来たね!じゃ~月が球体でなかったとしたら、どんな形をしていると考えられる?」

はぁ!そんな事を考える必要が何処にあるのと思いながら、此処で黙ると負けた様な気がして反論を考えていた。

「球体で無いとしたら、円柱の方が有力だと思うわ。月の輪郭の直径と同じ距離の厚みを持つ円柱よ。月は恒星で

地球からは同じ面しか見えないし、厚みが月の直径と同じなら少し角度がずれた場所から見たとしても違和感は少ないと思うわ。」

「なるほど~」と頷きながら月城は、「ところが残念ながら月は、キューブでも円柱でもなく球体なんですよ。大昔に地球が四角だと思われた記憶が抜けなくてね、その時の記憶が月四角説を立証したくなるんですよ。」

何!この男、いい加減にして付き合い切れない!もう嫌~帰る~今までの時間を返して!

私のヒスを起こしている姿を見ても動じずに話しを続けていた。

「でも雪影さんが言った。月のクレーターと月が同じ面しか見せていない所に月が持つ真の姿の秘密が有るんですよ。」


すぅ
すぅ
Aug 10

雪影さん、こんにちは。


科学・数学・論理重視のディベート的な要素に、かぐや姫のような物語が組み合わさった独特な世界観が興味深く面白いと感じました。


月城さんの適当なノリと主人公の真面目な性質との相性が水と油並に悪いのだろうなと思い苦笑いしながら読んでいました。


月が持つ真の姿の秘密、気になりますね。次回も楽しみにしています。

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