四角い月9
(かぐや姫の血を引き継ぐ者・その二)
動揺する私を落ち着かせる為でもあり、自分の気持ちを整理する為も含めて、月城は、躊躇いながらもユックリと私の肩に両手を載せて喉の奥から言葉を吐き出す様に話し始めた。「チラシが雪影さんに付き纏った事から、月はチラシを雪影さんに見せたがっていた。チラシを見せて月観測に参加させたかったと考えられる。」「月城さん何を言っているのですか?当たり前じゃないですか、月は月読の血を引く私にも自分の意思を伝えて月読としての本来の目的を遂行させようとしているのでしょう。だったら…」まあまあ落ち着いてと言わんばかりに月城が私を制した。「月の思惑は、それで良いとしても君のお母さんがチラシを処分したとしたら、君のお母さんは雪影さんと僕達が接触する事を望んでいない!」「そこ、そこなのです。チラシしか捨てていないゴミ箱のチラシを処分したって事は、母にはチラシが見えていてチラシの内容も解っている。」月城が代弁する様に話しを遮ってきた。「君のお母さんは、見えていたし内容も知っていると思う。想像だがチラシがゴミ箱へ捨てられていた事から、雪影さんが月観測には興味が無く行く積りがないと思っていると思う。」話しの途中で月城がまさかという様な顔して聞いて来た。「雪影さん、もしかして月観測に行くってお母さんに言って出て来た?」の月城の問いかけに少し前の記憶を辿り「いえ、サークルの飲み会と言って出て来ました。」と答えた。
それを聞いて月城は胸を撫で下ろす様に話しを再開した。「お母さんが雪影さんを僕達と会わせたくないと思っているなら、僕達が月の意思に反した行動をしている事も知っていると考えられる。」「何度も言う様だけど、かぐや姫は月の意思を強く受け、行動力もどの系列よりも有り血の薄れにも影響を受けにくい」頷く私に月城は話しを続けた。「そして、かぐや姫の血を引く者は、今でも月の意思でなく自分の意思で月に都合の良い行動をしていると思われている。」「だから、お母さんがカグヤ姫の血を引いていたら、お母さんからしてみれば僕達は邪魔な存在で有り敵と認識されていると思う。」
「待って、待って!」月城の妄想とも思える話しに頭が付いて行かなく成って月城の話しを止める様に怒鳴り気味な声が口から出ていた。「私の母が地球環境破壊を志している?!」「よりにもよって何を言い出すのよ!馬鹿馬鹿しいリサイクル・ゴミの分別もしているし、パートをしている普通の主婦よ。会えば解るわよ、普通のオバ…普通の母親だわ。」一瞬だけれど他人に自分の母親をオバサン呼ばわりしそうになった自分に動揺したが、気持ちを持ち直して話しを続けた。「それに母から地球環境に関して良くも悪くも指示どころか話しをした覚えもないわ。」母の事を話すにつれ月城の母に対する言葉が許せなくなり少し興奮気味に噛みついていた。「私だけじゃなく、母まで反逆者扱いされるのは許せません。」威嚇的に睨みつける私に月城は頭を搔きながら「悪かった、お母さんを悪く言う積りでなかった。」月城は、またやっちまったと言う様な顔をしながら話しを続けた。「だから雪影さんが言う様に普通の母親だとしたら君が捨てた普通の人に見えないチラシを見て処分した事や、雪影さんにもチラシが見える事や僕が話した月の言葉を理解出来た事の説明が付かなくなる。だから不明な事柄をハッキリさせて、お互いに安心しないかと提案しているのだ。」確かに月城の言う様に母親のチラシに関する行動と私が体験した不思議な出来事を無視して自分の周りで起こっている事を解明するのは難しそうだ。あれこれと思案していると月城が追い打ちをかける様に「雪影さんだってチラシの件や色々と不可解な出来事をスッキリさせないと先に進めないだろう!僕も雪影さんがかぐや姫の血を引く者の可能性が有ると知ってしまったからには知らぬ振りが出来ない立場なのだよ。」その言葉には切羽詰まった緊迫感が顔の表情と共に感じ取れた。
知らぬ振りが出来ない立場?そう言えば、月城の事を生理的に苦手と感じているせいか月城の事を本人に詳しく聞いた事が無かった事に気付いた。とは言っても月城を詳しく知る事にかなり抵抗を感じる。どうしようもない感情を押さえつけて質問を投げ掛けるのに時間が掛かった。押し黙る空気の中での苦悩にしか見えない私の表情を見て月城が重い腰を上げる様に言った。「あのさぁ~雪影さん自分との会話が、そんなに苦痛かな?でも協力して行かないと可なり苦労すると思うし…そうだ、お母さんの為だと思って割り切ってくれないかな~。」なるほど、母の為に先へ進む為に自分の感情を抑えよう。重い気持ちを宥めながら月城について聞く事にした。
「月城さん、私や母がかぐや姫の血を引く者として可能性が有ると知ったら、知らぬ振りが出来ない立場って言うのはどう言う事なのですか?月観測では皆の前に立って行動していた様に見えていましたけれど、貴方の月読での立場ってどの様なものなのですか?」一歩も引かない構えで月城に迫ると、一変した私の態度と言葉に参ったなという顔をしながらも、これで先に進めるという安堵感に顔を緩めながら話し始めた。
お強いですね、わたしなら真っ先に書き直して口をつぐんで知らん顔、そんな事無かったようにしたでしょう。
貴方の人としての大きさ強さに尊敬の念を禁じません。
実は管理者様からあまり知識をひけらかすようなコメントは控えるよう注意を頂いたので辛口コメントは控えようと思っています、ご了承くださいね。