(鍵)2
(鍵穴探し)
怖くなってメモの指示通りに交番へと向かった。取得物届を手提げカバンの内ポケットから出して、おまわりさんに見せると「取りに来られたのですね。」と言いながら奥の部屋へと入り、手に鍵の入ったビニール袋を持って戻って来た。「何となく取りに来られる気がしていたのですよ。」と言うだけあって前もって連絡していたかの様に段取り良く鍵を渡された。引取りの手続きを済ませて鍵を受け取って見たが、やはり見覚えが無い。
家に帰って目に付いた鍵穴に差し込んでみるが合うはずがない。何処の鍵なの?そもそも私の鍵で無い可能性の方が大きいのだからね。鍵をエプロンのポケットへ入れて家事中心のシフトへと切り替え夕飯の支度も終盤へと差し掛かった時「ただいま~。」と夫が帰って来た。「お帰り~夕飯、すぐに出来るけど食べる?」との問いかけに「イヤ、先に風呂に入ってユックリ食べたい。」と返事が返って来て、風呂場へと向かう気配がした。
夫が風呂から上がる頃にはテーブルに夕飯を並べる事が出来た。相変わらず味の感想も言わずに料理を口に運ぶ夫に鍵の事を聞いてみた。「ねえ、この鍵を見て何か思い当たる事って無い?」エプロンから鍵を取り出して見せると「?…其の鍵がどうかしたのか?俺が使っている鍵はキーケースに入れているから落としてないし、何か古臭い…アンティークな鍵だな。」夫は変な気を使いながら答えた。「別に気を使わなくて良いわよ、私も古臭いと思っているし、何より私の鍵でも無いし何処の鍵かも解らないのよ。」やれやれと言う顔で「また酔った時に誰かの鍵を持って帰って来たのか?」と言ってきた。「もう良いわ、心当たりが無いなら他を当たるから、食事を済ませましょう。」と言って鍵の話しを終わらせた。食事の片付けを終わらせて飲み直そうとお酒の用意をしていると、夫が少し付き合うと言って横へと座った。「其の鍵、どうしたんだよ?何か訳ありなのか?」その言葉に鍵のメモの事から交番へ引き取りに言った経緯を話した。「ふぅ~ん。それは不思議だな、餅は餅屋と言うじゃないか、鍵は鍵屋に相談したらどうなんだい?鍵屋なら、どんな所で使われている鍵か解るんじゃないか?」夫の言葉に「あなたも、たまには良い事を言うわね。明日、帰りに鍵屋へ寄って聞いてみる。」の私の言葉を聞いてから、グラス一杯のハイボールを飲んで自分の部屋へ仕事をしにいった。
翌日、仕事場で鍵穴を見かけては鍵を差し込んでみたり、同僚に鍵を見せては心当たりが無いかと聞いてみたが成果は無かった。仕事帰りに駅の商業施設の「鍵の事なら何でも相談お受けします」の看板を出している店に寄って相談する事にした。店員さんの最初の言葉が「鍵は有るけど開ける扉が無い?それで何に、お困りなのでしょうか?」と可なり困った顔をしていた。「この鍵が使えなくて困っているの、この形の鍵って何処で使われているか解りませんか?」店員が鍵を手に取り見ながら「古いタイプの鍵ですね、断定は出来ませんが建物の鍵じゃなくて、鍵の大きさから見て昔の蔵などで使われている大きな錠前の鍵じゃないかと思います。」蔵と違う可能性は無いかと色々と聞いてみたが答えは出なかった。
帰りの電車の中で、どの扉にも合わない鍵を持つ主人公が最後に鍵に合う扉を造り、その鍵で造った扉を開けたら未来が開けたと言う物語を思い出した。これだと思い、家で夫の帰りを待って、電車で思い出した物語を話した。
雪影さん こんばんは
一話で終わりかと興味深々で拝読させて頂きましたら二話がありました。
まか不思議なミステリアスな鍵のお話に興味深々のUUXです。
すっかり雪影さんの物語に引き込まれてしまいました。
詩にもとてもひかれていたUUXですがさすが…と敬服してしまったUUXでした。
続き楽しみにしています。