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物語

公開·12 メンバー
雪影
Crystal of Comments
天空の雪Heavenly Snow

鍵(4)



(扉の向こう側)

 鍵の出来上がりは待ち遠しかったが、こればかりは待つしか方法がないと諦め、ドアの方を考える事にした。DIYで造るとして、夫がドアを造る程のDIY力を持ち合わせているか疑問だが聞いてみる事にした。夕食の会話が最近、鍵にまつわる事が中心で不思議と夫婦で共通の楽しみを持てた気がして違う意味でも楽しい。夫が先に口を開いた。「鍵で何か進展が有ったか、何か行動を起こそうとしているな。」含み笑いを浮かべながら夫に聞いてみた。「ねえ、あなたってDIYで扉とか作れる?勿論、本格的な扉は期待していないけど開け閉めが出来て、私が屈んで通り抜けられる大きさの扉をね。」の言葉に夫が「木枠を造ってベニヤ板を蝶つがいで固定すれば良いんじゃないか?でも此処で造るのは無理だから恵子の実家の庭を借りて造ろうか?」の言葉に「へ~扉を造れる自信が有るんだ~。まだ知らない男らしい所が有ったんだね。」と感心して言って「解った。実家に電話して庭を使える様に頼んでおくわ。」と食事をしながら鍵の計画の話しをする夫の顔を見ていると、計画が着実に進んでゆく事に夫も満更でもなさそうだ。

 鍵屋にお願いして3週間目の半ばに連絡が入っていた。会社帰りに寄ってみると「お待たせいたしました。出来上がっていますよ、こちらに成ります。」と渡された鍵は錠前でなくて、扉にはめ込む形の鍵だった。店員さんが私の表情を察して「錠前にしようかと思ったのですが、ドアの鍵なら、こちらの鍵の方が良いかと思ったんですが、錠前の方が良かったですか?」と聞いて来た。確かに鍵の形を指定して無かったし、錠前の話しの流れで勝手に錠前だと思っていた事は、こちらのミスだもの「いえいえ、大丈夫です。ドアをDIYで造ろうと思っているので少し不安になっただけで、造るのは主人なので頑張って貰います。」と言う言葉を聞きながら、店員さんは少し気まずそうに鍵を差し込み回して、スムーズに鍵が動く事を見せてくれた。「ありがとう。これで鍵が使える様になったわ、後日ドアを開けた結果報告をしに来ますね。」「有難う御座いました。結果報告を楽しみに、お待ちしています。」

 土曜日に実家でドア造りをする事になって、夫と私の父がホームセンターへと材料を買いに出かけた。二人を待つ間に母から散々、小言を言われたが最初から諦めている様子で、父は昔から私のやる事を応援してくれる優しい父で夫とドアの設計図を楽しそうに書いていた。本当にアナタは厄介娘だわと言いながら昼食用のおにぎりや軽食を作り始めた。

いざ造りだすと父と夫が拘りだしてノブを付けるのだとか、鍵を完全に埋め込みにするとか言い出して出来上がったのが夕方近くに成った。

 「出来たぞ~!」の声と共に二人してガッツポーズをする二人の前に現れたドアは想像以上の出来栄えで、小さいけれど色を塗ればドラえもんの何処でもドアを思わせた。「凄い!ドアじゃない!」当たり前過ぎる私の言葉に二人は呆れて言葉を返して来なかったが、問題は、ここからなのよね~。の気持ちと言葉を抑えてドアの前に立った。鍵を差し込み、念の為に鍵を閉めてからカチリと音をさせながら鍵を開けてドアを開けてみた。開けたドアから見える景色は、ドアの周りに見える景色と同じで実家の庭だった。「じゃあ、潜(くぐ)るわよ。」と言ってドアを潜(くぐ)った。そして私の目の前に広がっていた風景は、父と夫が、これで満足したかと言わんばかりの顔と、「後片付け、ちゃんとして下さいよ。」の言葉を残し台所へと消えてゆく母の姿だった。結構ショックを受けていた私と違って、父と夫は色を塗って子供の玩具にしたら良いんじゃないかと自分達の作品の行く末を考えていた。


※毎週金曜日の更新ですが、予定が入ったので一日早く更新させて貰いました。

UUX
UUX
4 日前

雪影さん おはようございます


鍵実家のお父様も巻き込んで出来上がりましたね。

作っているとき二人は鍵のどんな話をしていたのでしょうね。

そして作者の思惑どうりに作れたドアを開けてくぐった風景がドラエもんと違っていつもの変わらない実家の庭の風景だったようですが…。

父と夫は色を塗って子供の玩具にしたら良いんじゃないかと自分達の作品の行く末を考えていた。

でも読者としてはここでお話しは終わりませんよね。

この男性達のおもちゃという会話から展開が始まっていくのでしょうか

それとも二人だけの素敵な景色の見える場所へ行って二人でドアを開けくぐった先の風景がとてもすがすがしい風景であった…なんて…

そしてこの鍵はご夫婦二人をつなぐ心の鍵だったりして…

勝手に物語の続きを想像してみたUUXで、大変失礼を致しました。

この物語の終板がどんな展開になっていくのか楽しみですね。




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