チッチーとヒャンリ (おしまい)
昨日の暴風雨があったから、今日は暑さを減らしているチッチー。あまりすることがないのでヒャンリから漂ってくる冷気をそよそよと浴びていた。
ヒャンリは自然にすずしさを造って、あっという間に冷気にまで強めてるけど、僕はあんな風にはできないなあ。暑さのきっかけになる湿気や空気の停滞やら、いろいろなものを利用しないとだめだもんな。
もっと研究しなくっちゃ…
ヒャンリはヒャンリで、冬の地域に冷気を注ぎながら考えている。
僕の力がチッチーと同じくらいなら、こんなに気温が高いままにはならないはずだ。でも、冷気が強いだけだと気温差がどんどん極端になるだけだし、チッチーは寒さに弱いから、厳しい寒さが続くと元気がなくなっちゃう。
チッチーが造ったあたたかさを活かして、安定させることはできないかな。
ヒャンリはすずしさを造るのに集中しているつもりだが、どちらかというと落ち込み冷気が大きい。
ヒャンリの冷気はどんどん強まっていく。
しんしんと募る寒さ。強風が吹くでもなく、雪が積もるでもなく、だだひたすらに寒い。冬の地域は、今年一番の寒さになった。
「ヒャンリ、そろそろ寝ようよ。もう今日のすずしさは十分だと思うよ」
ガクガクガクガク震えながらチッチーが声をかける。
「え?
あれれ、冷気を造りすぎたかな。ごめんやりすぎちゃった」
と言いながら、冷気を自分の中に封じ込め、ちょんっと一瞬だけチッチーの指に触れる。
これはヒャンリのスキンシップ。
チッチーは冷気に弱い。特に、こんな風にガクガクしているときにヒャンリが触れすぎると、チッチーの中の熱が奪われて消滅してしまう。だからちょん とだけ触れる。
一瞬だけど、ヒャンリのちょんっが嬉しくって、気持ちがぽかぽかして次の瞬間チッチーの寒さが吹き飛ぶ。
「大丈夫だよ。さあ、早く寝よう」
「うん」
今日は寒い一日だった。
冬の地域はもちろんのこと、夏の地域もびっくりするほどの涼しさだった。
眠るにはちょうどいい気温だ。
この気温は、二人が目覚めるまで続くだろう。
(おしまい)
こんにちは新入会員のクロエと言います、よろしくお願いします。
このところの気候変動そのものの様なお話ですね、この物語の様にチッチーやヒャンリと話が出来たら、ここは良いからもう少しあの町を冷やしてあげて、とかあの国を温めてあげて、とか頼めるのにね。
物事思うように行かないのは気候だけじゃなく、人との交わりでも感じます。
擬人化のおもしろさを味会わせていただきました、ところで幾つかの章に分かれていますが一気に読む方が面白いと思うのです、ここに。は文字数制限とかあるのでしょうか。