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物語

公開·12 メンバー

雪影

Crystal of Comments

天空の雪

Heavenly Snow

四角い月(2)


(月観測への誘い)

?マークを頭から出しまくってる私にお構いなしに男は喋り続けた。

「ずっと探していたんですよ!姫!…」

男が話す内容は一切頭に入って来なかったが、姫と言う単語だけが心に響いて来た。

「姫!何?誰が?ちょっと待って下さい。」

ナンパって、こんな感じなの?どう断れば良い、無視して車に戻ろう、そう無視だ無視するのが一番よ決めた。

車へと戻ろうとする私の肩に大きい男の手が掛かった。

思わず「ひ~っ」声に成らない声が喉の奥から出た。

男は、棒立ちに成っている私を見て狼狽し困った様子で張ろうとしていたチラシを差し出している。

「これを読んで来て下さい。必ず来てください。姫 いや貴女にとっても大事な事なので必ず来てください。」

もう、恐怖で体が動かないし声も出ない。誰か助けて!お願い助けて!

「お~い どうした?何か問題か?」作業を終えたドライバーさんが帰って来た。

それを見て男は、チラシを私の手に握らせて去って行った。

残りのお茶を飲み落ち着いた所で、張り紙をしようとしたので注意した事を説明した。

「そうか、怖い思いをさせて悪かったな。この後の現場では降りて作業しなくて良いから」と優しく言ってくれた。

「ところで、渡されたチラシには何が書かれていたんだい?」

「ああ、これです。これが渡されたチラシなんですけれど…内容は…」

「おいおい、チラシって何も持って無いじゃないか~。次の現場まで少し目を閉じて休むと良い」

寝ても良いよと言えないドライバーさんの心遣いに甘えて、これ以上の説明を諦めて目を閉じ男との出来事を整理する事にした。

車の揺れが心地よく現場に着いては起こされての繰り返しをして、出来事の整理どころか仕事をした実感さえ感じられぬままに仕事終了の時間を迎えていた。

ドライバーさんに申し訳なくて平謝りして缶コーヒーを渡して派遣の仕事を終えた。

帰路の途中でも男の事は頭から離れなかったが、チラシを見ようと思わなかった。

帰宅して食事と風呂を済ませて自分の部屋で一息付いた時にチラシが気になり目を通してみた。

〈月観測をして新しい月を見つけましょう〉

という大きな見出しから始まるチラシには、日時と場所が書かれていて

あなたの目には月がどんな形に見えていますか?もしかして丸!よ~く見て下さい月が本当に丸いかどうか、

私と確かめてみませんか!いえ、アナタは必ず来て私と新しい月を観るでしょう。

何、この文面!頭が変か悪すぎる。こんな文面で参加する人が居ると本気で思っているのかしら。

その時、別の考えが浮かんで来た。それは、誰も参加しないイベントに自分が参加して、あの男と二人きりに成るシュチュエイションだった。

背筋に冷たい物が走る感覚と悪寒が体中にして、男に話し掛けられた時の恐怖が蘇って来た。

チラシにまで恐怖を感じて丸めてゴミ箱へと捨てた。

恐怖からか高ぶる精神状態で寝つきが悪かったが眠りに入る事は出た。

夢にまで出て来ないでよと細やかな願いの元での眠りだった。


すぅ
すぅ
Jul 18, 2024

雪影さん、こんにちは。

物語を読ませてもらいました。


謎の男性はチラシを読める人を探していて主人公が読めたから貼る必要がないと言ったんですね。腑に落ちました。


主人公からしたら見知らぬ人にいきなり姫と呼ばれて、何故か自分にしか見えないチラシ渡されて、内容は何故か天体観測のお誘いで、人の気持ちや話は一切無視の男性とか悪気はないんだろうけどそれは怖いよねと共感して苦笑いしながら読んでました。


展開の仕方が興味深く、主人公と謎の男性の会話の非日常感とペア組んでくれた男性の日常感の対比が面白いと感じました。


続きを気長に楽しみにしてます。

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