とある操り人形の物語(4)
〜第3章 少年と操り人形〜
「わぁ~やっぱりそうだ! この子僕が小さかった頃、お母さんに連れられて見た 踊るお人形さん!お洋服もお顔も髪型も全部一緒だ!
ねえねえ、君は僕のこと覚えてるかな? あ~、でもあの時はいっぱい人がいたからお客さんの顔全部は覚えてないよね?
僕は生まれつき見たままを記憶できるから君がそうだって一目で分かったんだけど。
それにしても偶然とはいえ、君にまた会えてすごく嬉しいよ。
実はねあのあと僕、君の持ち主に憧れて人形師になったんだよ? 僕たち運命的に出会えたって思わない?
あのね、僕のためにもう一度踊ってよ? 君の踊る姿がまた見たいんだ!」
少年はキラキラした瞳で私を見つめながら興奮したように言うと、あっという間に購入しました。
私はそんな急展開に驚いて目を白黒させていました。そう、心の中で。
少年は私を腕に乗せると、それはそれは嬉しそうに楽しそうに自分の話、未来の話をしてくれました。まるで私が生きている人間かのように。
私は少年の勢いに呆気にとられながらも嬉しくて、でも私は前の主様の時みたいに売られてしまうのではと不安で仕方ありませんでした。
そんなことを考えていると少年の家につきました。
「ようこそ! ここが僕の家だよ。操り人形は君だけだけど、お人形さんが沢山ここにはあるんだ。僕のお父さんはね人形作りをしてるんだよ。
だから、僕も僕の家族もお人形さんが心から大好きなんだ。」
そう言って心から大切そうに人形たちを見つめる少年を見て私は期待してしまいました。そんな私の目を見つめて彼は真剣に語りかけます。
「君がいつか踊れなくなって、ただのお人形さんになったとしても、古くなってしまったとしても、
僕は生きてる限り絶対に君を手放したりしないからね。」
それは私が壊れるまで聞けないと思い、でも叶わない夢と知りながら願っていた言葉で心から驚きました。
後2章で終わるんですか、主人公が人でなく人形である所が不思議な感覚で読める物語だと思ってます。ディズニーの映画とかで玩具が主役をしているのが有るけれど、人形と人が同じ舞台で物語を進められるんだと、物語を書く側での視線でも楽しんでいます。突然、頭に浮かんだフレーズが有ります。吾輩は猫である。名はまだ無い。だったかな~夏目漱石先生の「吾輩は猫である」作品の内容も雰囲気も全然違うけれど目の付け所が近いのかなと思いました。後の展開を楽しみに読みに行きます。