初恋
第一話 告白
僕の名は岩井武志、高校三年生である、僕の初恋の話をここに綴ろうと思う。
それは雨上がりの爽やかな風が吹く午後の事だった、放課後の教室で友人と夏休みの事や修学旅行の事など取り留めもなく話していた。
外を見ていた友人が不意に「武志、あの子が居るぞ」と校庭の方を指した、彼の言う「あの子」とは僕が恋心を抱いている文学部の一年生、千綾さんのことだ、僕が彼女にあこがれていることを知っている彼は「今がチャンスだ、行ってこい」とけしかける、確かに他の者に邪魔されない良いタイミングかも知れない、僕は急いで階段を駆け下りると校門の向こうを帰る彼女を追いかけ水たまりを飛び越え走った。
息を切らしながら駆け寄ると彼女を呼び止めた「千綾さん」僕の声に振り向くと「あ、先輩こんにちは」いつもの可愛い顔でちょこんと頭を下げた「あの、突然だけど、ぼくとつきあってくれませんか」思い切って単刀直入に用件を言った、彼女はきょとんとした顔で「付き合うってどうするんですか」と聞いて来た、意外な返事に僕は言葉を詰まらせながら「あの、時間のある時にでも君と話がしたいと思うから」「話だったらクラブでも出来ますけど」「いや、クラブだと君だけと話する訳にはいかないから」「そうですか」彼女の反応に嫌な結果を予感し「いや、今すぐに返事をくれって言うんじゃないんだ、考えてみてほしいんだ」僕は結論を先送りにすることで結果が好転することに期待してそう告げた「べつに考える事無いです、はい」彼女は笑顔であっけらかんと了解してくれた、僕は安堵の表情を悟られないように出来るだけさわやかな笑顔を見せて「ありがとう、じゃあまた」そう言って手を振るとまた駆けて教室に戻った、一部始終を二階の窓から見ていた友人は僕たちの様子から告白が成功した事を察知して「やったやった」と自分の事のように喜んでいた、僕が椅子に腰掛け息を整えるのを待ってから彼がおもむろに聞いた「いつ会う事になった」彼は興味津々で僕の目を覗き込む「そんなのまだ決めてないよ、やっと返事をもらっただけだから」彼は僕の返事に呆れたように言う「お前なー、明日から夏休みなんだぞ」「あ!・・・・」僕の頭からはその事がすっかり抜け落ちていた。
「岩井武志、高校三年生である」
彼女は笑顔であっけらかんと了解してくれた、
「ありがとう、じゃあまた」そう言って手を振るとまた駆けて教室に戻った、
「お前なー、明日から夏休みなんだぞ」「あ!・・・・」僕の頭からはその事
がすっかり抜け落ちていた。
高校生らしいすがすがしい会話ではありますが、高校3年のもう夏休みになろうとしているのに…これだけで浮かれてしまった岩井武志君…
せっかくの夏休みなのにこれからどうするんですか?
とまあ読者としては最初からやきもきさせられでしまいますね。