虚実の境界 視線と脱出
※注意書き※
本作は実際の人物団体とは一切関係ありません。同時に内容が重い、ホラー要素、学校に関する病む要素が含まれているので、大変恐縮ではございますが予めご了承いただいたうえで読まれることを個人的におすすめします。
心の準備は整いましたでしょうか?
苦手な方は読まずに戻ってください。
大丈夫ですね?……承知しました。
それでは【虚実の境界】
〜視線と脱出〜
始まりです。
「じゃあ、早速聞きたいことがあるんだが、夢野さんが青ざめていた理由教えてくれない?」
彼は私の方を真っ直ぐ見ながら
私に質問をしてきた。
「……多分おかしなこと言うと思うんだけど、笑わずに聞いてくれる?」
彼なら私の話を聞いてくれるかも
しれないと考えて私は確認した。
「あぁ、もちろん。」
彼はこちらを見てハッキリ答えた。
「実はこの学校にいると、変な違和感を感じることがあるの。例えば先生が長く喋るの初めて聞いたみたいな感じがしたり、鏡をずっと見てないような気がしたり、他にも忘れてるだけで色々あるような気がするの。」
これまでの記憶をどうにか集めて
彼に向かって違和感を語る。
「それはたしかに妙な話だな。でも、夢野さんがそう感じたなら真面目に考えるのもアリだと俺は思う。気にしないようにすると余計に気になって不気味に感じるだろ?なら向き合うのはどうだ?協力するから。」
彼は怪訝そうに首を傾げながらも、笑わずに額を擦りながら一緒に解決しようという。
「それもそうだね。ありがとう。……えっ?」
私は彼の優しさに安心して
息を吐いた次の瞬間。
……私は妙な視線を感じて周りを見ると、それまで各自で過ごしていたクラスメイト達が全員座った状態で、こちらを一斉に向いていることに気がついた。
「おい、急に青ざめてどうしたんだよ?」
怪訝そうな顔をする斎藤さんに
私は小声で彼に疑問を口にした。
「えっと、まだ授業始まってないよね?そんなに大きな声で私達話してないよね?なのに何で全員座った状態でこっちを一斉に見てるんだろう?」
彼は私の言葉を聞いて答えたあと
視線だけクラスメイトに動かして
眉をひそめて不思議そうに言った。
「あぁ、担当の先生まだ来てないし、
そんなデケェ声でうるさく話してないだろ?どうなってんだ?」
私はモヤのかかった頭から記憶を探りながら彼の質問に答えた。
「分からないけど、私の方に彼らが監視するように視線を向ける事はよくある気がする。一斉に全員こちらを見るはないけど。」
額に指先を与えながら彼は
可能性を探っているらしい。
「俺が今日入ったばかりの転校生だからって言うのもあるかもしれねぇし、イレギュラーが起きたのかもしれないな。」
私はクラスメイトの視線が怖くて
身を小さく縮めていた。
「そうかもしれない。でも流石にいつも以上に怖い。」
そんな私の様子を見て
彼は心配そうに聞いてくれた。
「おい、夢野さん。あんた大丈夫かよ?視線かあるだけで害はねぇけど、居心地悪いことには間違いないな。よし、この教室から出てバックレようぜ。」
私はその言葉に目を見開くほど驚いた。初日からバックレる!?本気なの??立ち上がりそうになる彼を制しながら彼を必死に止める。
「さ、斎藤さん、これから授業が始まるし登校初日だよね?それは流石にマズいんじゃないかな?」
引き留めようとする私を見て
息を吐いた後、彼は
「今はそんなこと言ってる場合じゃねぇだろ?あんたの顔色青通り越して白くなってるんだぞ?情報不足すぎて下手に動けねぇし、今は一旦撤退して立て直そうぜ。ほら、行くぞ。」
言葉と共に私の手を取り立ち上がらせ引くと教室から2人で外に出た。
「わ、分かったから、手を引いて移動するのは恥ずかしいから、離してくれる?」
想定外の出来事に混乱しながら、あまりに気恥ずかしいので手を離して貰えないかと彼に頼む。
「悪いけど、それは駄目だ。手を離したら夢野さんならクラスに戻るとか言って帰りかねないからな。」
そんな私の気持ちを他所に彼はこちらの心を見透かしてあっさりバッサリ却下した。
「うっ……それは。じゃあ、約束するから離してくれる?」
それでもこの状態は恥ずかしいので逃げないから離すようにどうにか頼み込む。
「本当だな?なら、離すぞ。それはそうと、屋上に向かうための階段何処にあるか教えてくれねぇか?」
彼はこちらを真っ直ぐに見て確認したあと手を離すと屋上に続く階段の位置を聞いてきた。
「うん、突き当りを左に曲がれば上に上がるための階段があるよ、ほら?」
私は指を差して階段の位置を彼に教えた。
「あっ、あれだな。ありがとな。それじゃ屋上に向かうとしますか。」
彼の言葉と共に私は彼と屋上の階段をあがり、扉を開いたのだった。
続く
斎藤さんの言動から情景や夢野さんの心情が伝わって来るのが良いです。斎藤さんの優しさと強引さが、今回の物語で出ていてワクワクしてます。何気ないアドバイスで一緒に夢のさんが感じてる不安感や恐怖と立ち向かおうとしてくれる所も素敵。クラスメイトからの異常な視線から感じる緊迫感も斎藤さんの額に指先を与える姿を引き立てるシュチュエイションの様に感じてワクワクの一つでした。私なら斎藤さんに手を放してと絶対言わないだろうな~言わないというより言えずに斎藤さんに引っ張られて行くだろうなと思いながら屋上での二人の展開が楽しみです。