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フォーラム記事

葉月 楓羽
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2024年6月14日
In 詩
恋はまほろば。とりわけ片想いは。 恋は泡沫。とりわけ両想い は。 恋とは正に明晰夢のよう。 それこそ夢幻泡影の代表とも言わんばかりに。 恋は可惜夜。とりわけ成就一歩手前の片想いは。 恋は待宵。とりわけ苔のむすまで時経た両想いは。 恋とは正に夜の帳のよう。 それこそ憂き夜の夜さりとも言わんばかりに。 心に淡くちらちらと天使の梯子がさしたから、 ———まほろば、可惜夜、泡沫、待宵……。 あなたへ今、玲瓏と想い初める。
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葉月 楓羽
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2024年3月27日
In 詩
「ねえねえ、あのさ———」 「うん、そうだね」 「それでね———!」 「そっか、そうなんだ。」 …………。 『今、天使が通ったね。』 何人も何人もに天使を見送ろう。 たまにはそんな空間もあっていいんじゃない。 『また天使が通ったね。』 無理に喋らなくてもいいよ。 ゆったり天使を見送る時間にしよう。 あなたの隣。あたたかい陽がふんわりさした。
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葉月 楓羽
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2024年3月14日
In 詩
風が私には囁かないとか 小鳥のさえずりに混じれないとか 波が私の足を連れ去ろうとするとか そんな些細なことじゃなくて、 靴の片っぽが渦潮に呑まれたとか 素足で真夏のアスファルトを踏むとか 赤い耳に雪が降り積むとか そういう苦しみ。 靴の片方の代わりはないし アスファルトの道は絶えないし イヤーマフは売っていない。 そういう虚しさ。 苦しみの核に手が届きそうなのに 苦しみに中に手をつっこむたび わずかな水圧で少し、また少し核が遠のく。 そういうもどかしさ。 そしてなにより 諦めた手にまとわりつくように残る 苦しみの感触。 そういう気持ち悪さ。
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葉月 楓羽
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2024年2月20日
In 詩
わたしの海へ。聞こえてますか。 あなたは今、どこにいるのでしょう。 空というよりも、この海の深い深い青にとけていそう。 はじめて私が覚えた色は、この、あなたの、海の、色だった。 運命みたいなものかもしれないね。 私の半分はあなた。あなたの半分は私。 あなたはどんな顔をしているの。 あなたはどんな声をしているの。 あなたの背はどのくらいだったの。 全て全て知り得ることはない。 わたしの海へ。 海を見る度、あなたを思い出す私のように、 どうか花を見る度に私を思い出してはくれないか。 この海にあなたがとけているのなら、 そっと親愛の口付けをするように。 あなたの場所に咲く花があるのなら、 そっと抱きしめてはくれないか。 「会いたい」 ただこの一言に尽きるよ。 私の心臓を、脳を、肺を、細胞を、 半分だけ持ってどこへも行かないでくれ。 羊の水に溺れる前に私の手を掴んでくれ。 川に流される花のように流されないでくれ。 あなたといたであろう10ヶ月程のみじかい間。 もちろんなにも覚えてないけれど、 あの温度にもう一度触れたい。 わたしの―――海へ。 天国のあなたに、どうか幸あれ。
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葉月 楓羽
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2024年2月08日
In 詩
あいってなんだろう。 漢字で書くとね、「愛」 “あいが重い”って言うから重みのあるものなの? それでも私は重みを感じたことはない。 空気のようなものかしら。 “あいされる”とぽかぽかするから温度のあるものなの? それでも私は冷たさは感じたことはない。 お布団のようなものかしら。 “心”という文字が入っているから心にあるものなの? それでも私は心の中に感じたことはない。 光のようなものかしら。 色も形もどこにあるかもわからない。 けれども確かにここにある。 感触もないのに触れることができるのだ。 あいってなんだろう。 いつかそれがわかるまで、 小さな私の「あい」探しの旅はつづくよ。
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葉月 楓羽
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2023年12月26日
In 詩
気が付いたらそこにいて たぶん誰よりも近くにいる 一番長いこと一緒にいる あなたは私のことをなんでも知っているような顔をしていた 私は多分そんなあなたに他の誰よりも嘘をついていた 一番私の近くにいて 一番なんでも知っていて 触れたくなくても触れてしまうような距離にいるのに 手を伸ばしてもどうしようも届かないほど遠い 一度だって離れたことはないはずなのに 一度だって触れたことのないような 訳のわからない貴方と私は「ペア」 時には薬になるし 時には毒になる まるで名も知らぬ雑草の蔓延った庭のよう 感情だとかで切り離せるほど脆くなくて 気が遠くなるほどしがらみのある赤い線 同じ夜に同じ窓の同じ街灯を見ているはずなのに ふと盗み見たあなたの横顔が こんなにも遠いのはなぜなの 同じ朝に同じ空の同じ太陽を見ているはずなのに ふと握り返したあなたの手が こんなにも冷たいのはなぜなの 同じなにかを分け合った身のはずなのに あまりにも私にはこの光がまぶしすぎて あなたの隣でそっと目を閉じた 「ねえ、好きになれなかったのはお互い様じゃない。」
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葉月 楓羽
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2023年12月12日
In 詩
よつば。 それは幸せ。 それは生命。 それは宝物。 それは明日。 それは傷痕。 それは美しさ。 美しさ。 それは心。 それは自然。 それは透明。 それは儚さ。 それは残酷さ。 それは終わり。 よつばは、 傷ついた 「みつば」 美しさは、 終わり―死―の 「象徴」 今、目の前でひとつの花が散る、 美しさ。
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2023年11月25日
In 詩
大人になるということ 過ぎ去る年は子供の何倍も早くて 淡白な日々にふとはっとする 美味しいものを食べない限り、心はそう動かなくなっていた ただただ腹を満たすだけの退屈な作業 子供の頃にあった小さな幸せは一体どこへ行ってしまったのだろう プレートの上に載った小さな水滴 カラースプレーの中に見つけた好きな色 端っこに寄せておいたダイス状の人参 最後に残しておいたヘタ付きの苺 きらきらと輝いているグラスの中の氷 小さな水滴は蒸発し、 カラースプレーは色褪せて、 人参は真顔で喉を通り、 苺はヘタだけ残し、 氷はとけて水になった 子供の頃にあった小さな幸せは時に食べられてしまったのだった それが「大人になること」だと知っていても、 どうしようもなく悲しい まだ悲しいって思っていたい 下手ながら、この詩とセットとなるように描いたイラストを添えさせていただきます。
大人になること content media
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葉月 楓羽
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2023年11月17日
In 詩
まるでまちがいさがしのような世界。 同じでないものを探し出す。 みつかりはしないか、みつかりはしないように。 個性なんて謳いながらもそれは結局 “まちがい” でしかない。 大きな一枚の絵の中にまちがいを探し、×をつけていく。 きっと望まれているのは “正解” だらけの絵。 まちがいは排除されるべきと言わんばかりに。 同じが重宝される世界で、食み出したものは排除されるべく。 それでも私はまちがいを愛した。 目に眩しいほどのあなたの個性を。
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葉月 楓羽
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2023年10月21日
In 詩
空が青い 当たり前といえばそうだけど――、 ブランコが吸い込まれて、 それから、 消えてった シャボン玉がひとつ、 遥か彼方、 はじけ散った まっしろな風船を手放してみたら、 青く染まって消えてった もう主の手へ帰ることはない 青い鳥を飛び立たせてみたら、 青に溶けて消えてった もう二度として出逢うことはない あの青い空の向こうには何があるの 幾年と広がる闇から零れたひかり 手を伸ばしても届かないね あぁ、雲ひとつとしてないや
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葉月 楓羽
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2023年10月13日
In 詩
私の知る少女の中で、 ひときわ生き続ける少女がいた。 ずっと私の心の中で。 ふっとした瞬間に思い出す彼女のウィンドチャイムのようなさらさらとか細い声。 彼女はいつもみみず腫れを「白いミミズさん」と言った。 「どうしていつもそう言うの?」 私はふと問いかけた。 「だって、みみず腫れなんて痛ましいじゃない。」 彼女はふわりと笑って答えた。 ウィンドチャイムの儚い声。 桜のように散りそうな儚い笑顔。 彼女の足に住むミミズさん。 指の腹を介して伝わる生命の証。 そっと撫でた彼女に住む白いミミズさん。 ミミズ腫れを白いミミズさんと呼ぶ彼女。 そんな彼女が痛ましかった。
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葉月 楓羽

硝子花

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Crystal Princess
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