固く閉ざした心の扉
石造りで出来た塔の地下牢
外の世界に怯えて
日も当たらない暗がりに生きた
時間も忘れた虚ろな瞳は
何も映しはしなかった
塔の外では私の片割れが
外の世界で過ごしていた
笑顔の仮面と人形の身体で
傷つけられても治せるから
壊れたりはしなかった
私は二つに割れて片割れは外の世界
本体は壊れないよう地下に逃げた
そうしてどうにか生きてきた
外の世界で柔和な感動屋に出会った
気遣い上手で温かく包み込むような人
いつも楽しそうに話しかけてくれた
そうして自尊心と自信が戻った
外の世界で先生のような騎士に出会った
厳しさの中に温かな優しさがある人
見守ってくれているから安心できた
そうして社会性と外の安全は与えられた
外の世界で麗しのレディに出会った
穏やかでありながら彼女は芯のある強い人
花が薫るように艷やかで少女のように可憐だ
そうして憧れの人を見つけた
外の世界で吟遊詩人と出会った
何者にも縛られない自由な人
語るだけでなく耳を静かに澄ます人だ
そうして柔軟性と他者への信頼が戻った
片割れを通して出会った人が
私に外で生きる力を与えてくれた
地下牢と塔の扉を私の手で開けた
片割れと私は一つに戻り
本来の姿を取り戻す
本物の優しさは私を照らす
まるで夜明けを告げる太陽のように
ーあとがきー
数年前に自身が完全創作
書き留めた物語を再編
詩に変え表現したものです。
過去の実体験に創作を加えた
虚実入り混じる作品になります。
お楽しみいただけましたなら幸いです。