羽は影と語り合った
現在・過去・未来
喪失した感覚が
羽の中に宿った
瞳に映る景色が
耳に聞く音声が
明瞭で驚いた
光を透過する薄布に
長く覆われ生きてきた
ベールを上げた瞬間
羽は世界の一部になった
目を見開き驚く羽
影は優しく微笑み
語り合ったことに
お礼を言った
やっと一つになれる
不思議に思う間なく
長きに渡る強い緊張
開放から来る深い安堵
心の奥底で感情は波打ち
深海の底へ意識が沈んだ
深淵の闇に包まれる
引き金を引いた黒羽
目の前に現れ傷つけた
過去の続きだろうか
黒羽の鋭い眼光に
心臓が早鐘を打った
頭は不思議と冷えていた
影が傍で支えているからだ
決意を込めた視線で射抜くと
波紋ない泉の声で語った
自分の人生に集中しよう
執着するのは辞めよう
見えない傷を抱え苦しんだ
私達はお互いの鏡であり
同時に対の存在でもあった
前に進めない理由
押し付けあいは
今日でおしまい
私は私の人生を生きる
私は自分の足で歩ける
そう気づいたから
鏡のような黒羽さん
傷つけてごめんなさい
成長をありがとう
さようなら
羽は黒羽に背を向け
光ある天へと羽ばたく
声をかけられても
振り返ることはない
意識がゆっくりと目覚めた
頬に触れると指先に水滴がついた
陽の光に当たり虹色に煌めいた
羽は影に話しかけた
何度も呼びかけた
影は沈黙し語らない
二度と話せないと悟り
羽は影へ語りかけた
二つに割れた私の心
その片割れである影よ
助けてくれてありがとう
これからも宜しくね
雫が頬を転がり落ちて
羽は影を見つめ微笑んだ
風の精霊が褒めるように
優しく髪を撫で天へと駆けた
〜作者より〜
次回が羽シリーズの
最終回になると思います。
すぅさん、こんばんは。 お疲れ様です!
自己の内面の成長を、羽と影という天から生まれた一対の生命に喩えて謳った、美しくも、神々しい叙情詩を読んだような感覚です! シリーズの、一つ一つの詩が、苦難を乗り越えて今日まで生きて来た、作者の成長とともにあったことを、とても尊く思います。
それらは、私にとっても、大切な詩たちであり、ましてかけがえない詩人の、あなたの魂です!
最終回まで、がんばってくださいね、すぅさん ゆめの
こんばんは。
自分の中にいる二人の相反する人格、その対立に和解の時が訪れる、そんな事を想像させる詩ですね、とても深く、その中の意思見るのに時間がかかります、でも多分この詩はまた別の時に読むときっと別の顔を見せてくれる、そんな気がします。
「羽は影と語り合った」
「喪失した感覚が
羽の中に宿った」
ああよかった!…心の中でそっと思いました。
「私は自分の足で歩ける
そう気づいたから
鏡のような黒羽さん
傷つけてごめんなさい」
羽は心からそう思ったのですね。自他ともに心を見直しそっといたわる作者をとても素敵だと思いました。蝶が羽化した時と同じような作者の気持ちに触れさせて頂きました。
人は自分の心の中にある影に呼び掛けてみる事も時として必要なのかもしれませんね。
優しくてとても素敵な詩だと思いました。
羽化した蝶の羽のようにこれからの作者の益々のご活躍l期待致しております。
すぅちゃん 読ませて貰ったよ。読み応えが有る大作だね。でも長く感じない程に作品に入り込めた。
翼が脱皮して翼が進むべき道へと進みだした力強さと、それを確認した影の沈黙の意味深さが印象として一番残ってる。
指先についた水滴は泪かな?その涙が虹に繋がっている所と影の微笑みが読んでいて心を優しくしてくれた。
光と影が手を取って踊る様な作品も次が最後か~残念だけど楽しみな気持ちも大きい。すぅちゃんの次回作を待ってるね。