〜義愛〜
下
分かってる。分かってるんだ。こんな関係はもうやめだ。やっと、決心が着いた。そう思ったって、明日には貴方の家の前にいる。もう何回繰り返しただろう。私が純粋に愛してることなんて、きっと貴方は知っているのに、私の全部を見透かして、それでも知らないフリをして嘘をつくんだ。
どうして?もういっそ「気持ち悪い」「重すぎるから辞めてくれ」って突き放してくれれば、私は今より楽になるかもしれないのに。諦められるかもしれないのに。
『本当に?』
本当にいっぺんに突き放されたら、私は諦められるの?分からない。分かってるつもりでも、結局なんにも分かってない。それでもきっと、今日も体だけは重なるんだろう。1人用のベットの上で、2人の体が絡み合う。いつも上にいるのは私で、貴方は下で微笑んでいる。それでもベットがあまり軋んだりしないのは、乗っているのが1人分の愛だからなのだろうか。きっと体の相性は良いんだろう。現に貴方も、私の体を求めているのだから。そんな風に思うと、ただの「都合のいい女」でもいいかなって思えるんだ。それなのに、やっぱり心のどかでは、「特別になりたい」っていつも思ってる。
中途半端なんだよなぁ。私は。それで、貴方もきっと、中途半端だ。体だけなら、体だけ求めてくれればいいのに、たまに優しくするし、私に料理を頼むことだってある。たまに変に甘えてくるし、私の返事が素っ気ないと直ぐに拗ねる。貴方にとっては些細で何でもない事かもしれないけれど、私はいつも、それに酷く期待してしまう。
ほら、今だって、落ち込んだ私を優しく出迎えてくれる。他の女の子にもやってるのかな?私だけだったらいいな。そう思う私は紛れもなく馬鹿だ。
貴方は事が済んだら、メビウスの煙草を吸う。私が昔、好きだって言った銘柄だ。でも貴方は、私が昔、嫌いだって言った種類のお酒を飲む。
分かんないなぁ、もう。
貴方のスマホのホーム画面には、今日も知らない女の子が写ってる。それを見る度悲しくなって、離れなきゃって思うけど、フラれた貴方を慰めるのも、やっぱり私の役割だから。
どうして貴方はいつもいつも、貴方を愛さない様な、幸せにしない様な、見る目のない女ばかりを好きになるの?私なら貴方をもっと愛せるのに、私なら貴方をもっと幸せにするのに。だから、そんな顔だけの女じゃなくて、私と一緒に……
やめよう。貴方との関係も今日で最後だ。こんな関係は良くない。分かってる。分かってるんだ。そう言いながら私はまた
───繰り返す───
すぅさま、コメントをしていただき、また、作品を読んでいただきありがとうございます。
景色の一切を省き、心情だけに焦点を当てて描いた作品でしたので、そう言って頂けるととても嬉しいです。
こちらこそ、このように素晴らしい場に在れたことに深く感謝しております。