二つの詩(蜥蜴の詩編)
明日から連休が始まる。久々に夫と出掛けるのも良いかと思い立って、連休中で遊びに行ける日が有ったりする?とラインを送る。既読が付かないままで仕事の終わりを迎える。連休前で忙しくしているかな?休みを取るのも微妙かな?あれこれ思いながら遊びへの誘いは諦めムードに、遊びへの行き先も霧の中へと薄らぎ、夕飯のメニューに背中を押されて帰路につく。メニューが決まらない中で食品売り場をウロウロしていると、ラインの返事が届く。
「一日なら休みが取れそうだから、何処かへ出かけようか。仕事が終わったから外で飯を食おう。食いながら予定を決めよう。」毎度のマイ・ペース、私の都合は霧の向こう側で存在すら確認出来ない。追い打ちをかけるラインに、食事をする店の名前だけが浮かびだす。おいおい、家の近くのスーパーに居る私を空が飛べるスーパーガールとでも思っているのか?「遅くなるけど行くから待ってて」と返事をしながら歩き出している自分から幽体離脱した心が冷めた目で見送っている。美味しい料理と酒に向かっている肉体と納得いかない心のバランスが崩れる中で日常生活は成立しているのだと哲学的な考えで立ち止まっている心を肉体へと引き戻しながら店に着く。
「意外と早かったな。」と前の日から約束していたかの様なセリフに何を言っても無駄だと確信し「料理は頼んでくれているの?」と言うと「店のお任せで2品ほど出してと言った。何が出て来るか楽しみだろ。」と言って子供の様に笑っている。「ハイハイ、喉が渇いたから料理の前にお酒を頼むわね。」
料理に関係なく辛口の白ワインと決めているので、夫とお疲れの乾杯をして連休の話しを始めた。
来た料理は、サラダとスープと肉料理に魚のムニエルだった。スパイシーな肉料理でお酒が進んで、休みに行く場所の話しも進み近くの水族館へ行く事になった。
夫はワインを飲む手を止めてデザートを頼み、私はワインを追加で注文した。空のハーフボトルを振る私を見て、やれやれと言わんばかりの夫に詩の話しをしてみた。「昔、詩を書いていたと言っていたよね」「詩?ああ…書いてくれと頼まれて書いていただけだよ。詩なら恵子が書いているんだろう。」「そう、今ね「月と詩人」というサイトにあげる様になって、他の人の詩も読む様になって、あなたがどんな詩を書くか気になって読みたくなったんだけど、書いてくれる?」の言葉に夫はデザートのケーキを食べながらワインを飲んで「これ、恵子に出来る?」と聞いて来た。「そんな気持ち悪い事は出来ない。」と言うと「それが答えだよ」と言われた。「解った、前に書いてくれた蜥蜴の詩ってどんなんだった?」もう、忘れたと言いかける夫に「私に書いてくれた詩だから良いでしょ!」邪魔くさそうな顔をしながら店に置いてある紙ナプキンに何やら書いて渡してくれた。そこには、蜥蜴の詩が書かれていた。
蜥蜴
蜥蜴の尻尾は
主より離れ
束の間の自由を
貪り食う様に
踊り狂う
「改めて読んでも気持ち悪いわ~」と思わず口にしてしまった。「何だよ~書けと言ったから書いただけだろう。」不満げな夫に「あのさ~私に書いてくれた詩が、これって酷くない?虫とか爬虫類じゃない詩を書いてよ。」酔った勢いで言ってみた。すると再び紙ナプキンに書いて渡して来た。「何?」そこには、埃と忘却と書かれていた。「どちらの詩が読みたい?」と夫が言う「え?もう出来たの?凄い!両方、読みたい。」の言葉に手をクロスさせて「どちらかを読むか両方とも読まないか選べよ。」夫は自分も楽しみが無いと面白くないと言わんばかりに悪戯小僧の様に笑った。
「ほこりって掃除しないと積もる埃?」「そうだ、その埃だよ。」「ちょっと待って決められない。決まったら言うから、必ず書いてよ!」「良いよ、どちらか聞いてから考えるから選ばれない方は考えないし書かないから。」
どうしよう~どちらを読みたいと思いますか?物語を読んでくれている人は、どちらを読みたいですか?読みたいと思った方が有ればコメント欄に書いて下さい。お願いします。「誰にお願いしてるんだ?」「別に、ねえ、蜥蜴の詩をサイトにあげて良いかな?」夫は少し考えてから「読める人が設定出来るコーナーが有るなら良いけど、誰でも読めるのは悪いけど止めて欲しい。」「じゃ~メンバーが解っているグループ物語だけで公開する。」さて、そろそろ帰ろうか~の夫の言葉で2度目の家路につく。
(つづく)
※クロエさん蜥蜴の詩、気持ち悪いでしょ!
気持ち悪くはないよ、ただ奇抜なものの捉え方をする方だな、とは感じます。
詩のリクエストは「埃」でも「忘却」でもどちらでも、蜥蜴から察するに、多分私の想像をはるかに超えた内容だと思うので、楽しみにしています。
蜥蜴の尻尾、多分私なら初めから捨て駒にされた学徒出陣、死の行軍を思い、母体はモズの早煮えになって干からびてることを想像したでしょうね。