腕が伸びても届かない、
白い砂に混ざる
赤と黒の石のこと
しじみはいつも、それを読んでいる
人間たちよ、と
しじみは身体を震わせ唱える
人間たちよ、お前たちの悪い夢を
おれは世界の裏側から
拾ってくるのだ
悪い夢には道が出てくる
道にはお前たちがいて、
お前たちに似た像がゆらゆらと……
道を取り囲むように、
あるいは点々と、
地に染みを描いてゆくのだ
染みは大気や煙草のそれと
境界がつかず、
膨らんで萎んでいく
おれにとって、それは、
あちらに帰る烏の群れに
似たようなものなのだ
……私はかもめです
しじみの独白は
波の合間に隠しておきました
ウチダキョウカ さん
はじめまして
千束(ちづか)セロと申します。
まるで物語を紡ぐような言葉のセンスがとても素敵です。
「……私はかもめです」というしじみの独白も含め
本当に朗読家の方に声付きで読んでいただきたいような
自らの声に出して読みたい「言葉の心地よさ」を感じています。
まるでこれからも物語が続くのではないかというパワーまで感じる詩でした。