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フォーラム記事
松上桂矢
なでしこ
2024年11月24日
In 詩
たった1色のワンルーム
オルゴールのサウンド
一命を取り留めた
枯渇した花瓶 造花は捨ててしまえ
毛布は少女の生を知る 温もりを覚える
左手は右手に恋してる 絡み溶かし祈禱
すしゅりと挿す
見舞いにと手折ったニ輪
簪の花 華 ほら
髪をさいて 耳あたりに留まる簪
やわらかに濡らす 生の燈 飽和する君
花嵐のフレンチカンカン 彼女に色彩を
脈を得ることは、もうできないけれど
何故か胸が高まって仕方がないんだ。
きみの名前はスミレだよ。
これは今はなき男が捧ぐ純恋歌だ。
たった2人のワンルーム
たった1人のワンルーム
そして彼女は夢から覚める
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松上桂矢
なでしこ
2024年11月12日
In 詩
坊や アタイのこと 好きなのかい?
や だって さっきからずーっと
見てるじゃァないか
鏡玉越しでね 気づいてないと思ったかい
ひひ それもそうか アタイ綺麗だもんねェ
でも残念な知らせじゃ
アンタみたいな緑豆に 興味はないよ
アタイは 安売り品じゃァないのさ
それにほら アタイの体も濁ってきちまった
どんどん黒に染まってきちまってる
もう長くは持たんね
さァ 早く帰った 帰った
ん 坊や
なんだいそれ 撮影機って奴じゃァ………
勝手にしろ ほれ 一枚撮るがいい
満足したか ふ それは重畳
見ろ 煙管の煙も 濃くなってきてるじゃろ
緑豆餓鬼は帰れ ってこったァ
また 来ればいい その日を待ってやるよ
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松上桂矢
なでしこ
2024年11月04日
In 詩
[前略]
中学生のときは 何度も告白された
初めは いつもOKと返事したし
別れは いつも俺から切り出した
そのつど 彼女は泣いた 俺は泣かなかった
何で、って聞くから 適当に返した
馬鹿だのサイテーだの言って 走って逃げた
どうせイケメンの彼氏ができたのーって
俺をアクセサリー扱いして自慢してたんだろ
だから俺も同じように、ただ物を捨てた
[中略]
そんな俺も高校生になった
チャリでの通いやすさだけにひかれて
自分の学力にあった底辺公立高校に入学した
教室というzooには一際目立つ女がいた
………スッゲェ綺麗 一目で心を奪われた
光沢を放つ黒髪ロング 垂れに垂れた瞳
血色のいい白い肌 ほどよく肉付きしてる体
身長は…俺よりだいぶ低い
彼女の名前は_____らしい。
読書が趣味のようで 時間さえあれば
小さくて薄い、活字ばかりの本を読んでいた
彼女と話すきっかけを作りたくて
彼女のことをもっと知りたいと思って
カップルとかなれたらいいな、と思い
俺も同じように 本を読み始めた
彼女はあらかわ…?いやちがう、えっとな…
わかんねぇけどその人の本をよく読んでいた
だから同じ本を書店で探して買って、読んだ
[中略]
________久しぶりに筆を取った。
随分と昔の話だがその後の話を
ここに綴っていこうと思う。
ミモザが咲くには、まだ早い時期だった。
私は高校一年生で初めて、彼女に告白した。
いつも受身だった私は勇気を振り絞って
揺れる夕焼けを背にして手を差し伸べた。
彼女はもはや別人だった。
彼女を取り巻く環境が変えてしまったのだ。
光沢を放つ金髪ショート 吊り上がった瞳
ガングロ肌 爪楊枝以上に細い体
厚底のせいで本来の身長はもうわからない。
本なんて塵芥は捨ててしまったそうだ。
たった一年の努力 一年も努力したのだ。
それが無駄になるのが怖くて 告白した。
あの頃の彼女が戻ってくることはない。
当時、私は美少年だった。
成績もモラルも、人並みにした。
国語が、得意になった。
当時、彼女もまた美少女だった。
成績もモラルも、かつては人並みにあった。
国語が、かつては得意だった。
散文詩を書きたかったのだがね、
これじゃただの随筆じゃァないか?
まぁ ちと大目に見てくれ給え。
_
追記
公開後、一部訂正有り
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松上桂矢
なでしこ
2024年10月27日
In 詩
最初は、ただの興味だったの。
液晶に表示されたゴシック体の文字列
話す相手がいなかった。
ただ、ただそれだけだった
寂寂とした部屋は湿気に満ち、
肌に纏わりつく綿は、どうも気持ちが悪い
芳香も、今となっては鼻につく
垂れてくる髪が鬱陶しい
うわ、目に入った、痛ぁ
明日には美容院、予約しておこう
虐めだなんてない、平凡な生活
飢餓の心配だなんてしたことない。
結構恵まれてる方よね、わかってるわ。
だってアタシ、そんなこと考えたこと、
一度たりともないのよ?
でもさ、アタシ、わかんないことがあって。
人間関係、あれって複雑よ。
貴方にはわからないでしょうけど。
チャットアプリ、意外にも此奴が面白い
何言ってるかわかんない?
こんな戯言なんて、別に興味ないでしょ?
んふ、そんなこと言われちゃァ、わ |
………ただの興味だった
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松上桂矢
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